『パッキパキ北京』は、年齢差の大きい夫婦のドタバタ喜劇を装った哲学書だ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3639)】
ツグミ(写真1)をカメラに収めました。シデコブシ(写真2)、アミガサユリ(写真3~6)、チャボタイゲキ(写真7)、ヒメウズ(写真8)、カントウタンポポ(写真9、10)、コゴメイヌノフグリ(写真11)が咲いています。マンネンタケ(別名:レイシ。写真12~15)が生えています。町会の定例総会が開催され、議長を務めました。よき役員仲間に恵まれ、1年間、気持ちよく任務を果たすことができました。女房から、お疲れさまでした、と労(ねぎら)われました。
閑話休題、『パッキパキ北京』(綿矢りさ著、集英社)は、年齢差の大きい夫婦のドタバタ喜劇を装った哲学書だというのが、天の邪鬼の私の意見です。
36歳の「私」は、バツイチの20歳年上の夫に頼み込まれ、中国・北京で暮らすことになります。
ビジネスマンとしてそれなりのポストにいるが、駐在生活に馴染めない夫と、日本であろうと中国であろうと怖いもの知らずで勝手気儘に振る舞う妻。
夫は「弱々しい声で話し始めた。『日本で一緒に暮らしてたときは、君に恐いものが無いのが恐かったんだ。中国に来てからも、そういう風に感じることが多かった。でもこんな風になってから、どんなときでも平常心でいられる君を頼もしく感じるようになった』。私は異国でなんにでもびくびくしてるあなたを頼りないと思ってた、と言いたかったけど、相手は病人なので容赦して、代わりに優しく彼の前髪を指で撫でた」。
神経質でプライドが高く、失敗が恐いから何にも挑戦できない夫と、面の皮厚蔵だから煙たがられたりもするけど、全然へこたれない妻を巡って、いろいろなことが起こります。
私にとって知性とはムカつく相手をどれくらい早く言い負かせるかだし、教養とは狡い男に騙されず自分の好きなように生きるスキルのこと――と嘯く妻は、夫から『阿Q正伝』の話を聞きながら、夫の解説は無視して、「自他共にどうやっても認めざるを得ないほど社会の底辺に属してて、毎日イヤなことや辛いことがひっきりなしに起こってても、そいつがニヤニヤしながら『おれは敵などいない。全知全能の神だ』と心から言いきれるなら、こいつはもう、完全に勝利している、一番偉く、一番進化した、一番コスパの良い人類だ。『私はそこそこでいいの、そこそこの幸せでいいから』とか言って小確幸を求める中途半端な小市民を大きく突き放し、ぶっちぎりの第一位」という哲学的境地に達します。
その後の二人の運命は・・・読んでのお楽しみ。