疲労とは、ウイルスが引き起こす脳の炎症である・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3700)】
私は川中美幸のファンです。一番好きなのは『ふたり酒』です。川中美幸コンサートで、びっくりしたことがあります。彼女の話術が抜群に面白いこと! そして、彼女の上手な場の盛り上げ方は大変勉強になりました。因みに、本日の歩数は12,387でした。
閑話休題、「最近、評判の『疲労とはなにか』に対する、お兄ちゃまの書評を読みたい」という妹の要望に応えるため、読むつもりのなかった『疲労とはなにか――すべてはウイルスが知っていた』(近藤一博著。講談社・ブルーバックス)を手にしました。読むつもりがなかったのは、私が、よっぽどのことがない限り疲労を感じない人間だからです。
読み進めて、びっくりしました。何ということでしょう。疲労はウイルスが引き起こす脳の炎症である、慢性疲労症候群と鬱病はウイルスに起因する病的疲労である、さらに、新型コロナウイルス後遺症もウイルスに起因する病的疲労である――と書いてあるではありませんか!
●慢性疲労症候群の患者は脳内で炎症が発生しているが、原因ウイルスは、まだ特定されていない。
●6番目に発見されたヒトヘルペスウイルス6(以下は「HHV-6」と表記)が病的疲労を引き起こす。
●潜伏感染しているHHV-6がSITH-1(鬱病の原因遺伝子)を発現させ、SITH-1が脳内炎症を引き起こし、鬱病を発症させる。
●SITH-1は脳内炎症を消火するコリン作動性抗炎症経路を、アセチルコリンを低下させて阻害することで、新型コロナウイルス後遺症を長期化させる。
●鬱病、新型コロナウイルス後遺症の根本治療薬として、アセチルコリン分解酵素阻害薬ドネペジル(商品名:アリセプト)が有望である。
●ハンス・セリエのストレス学説に基づき、強い刺激を「ストレッサー」、抵抗反応を「ストレス(応答)」と正しく表記すべきである(私事に亘るが、かつて、東京女子医大の医用工学コースに通学していた時、ストレス検査機器開発をテーマとする卒業論文で四苦八苦したことを、懐かしく思い出しました)。
SITH-1を発見したウイルス学者である著者の主張は一見、大胆に見えるが、実証的な実験・研究に裏付けられているので、強い説得力があります。本書を読むきっかけを与えてくれた妹に感謝しています。