榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

ブラック・カルチャーは、奴隷とされた人々の苦難の歴史から生まれた・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3760)】

【読書の森 2025年7月10日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3760)

ヒカゲチョウ(写真1)、ツマグロヒョウモンの雄(写真2、3)、ハグロトンボの雄(写真4~9)をカメラに収めました。サルスベリ(写真10~12)、ワルナスビ(写真13)が咲いています。

閑話休題、『ブラック・カルチャー ――大西洋を旅する声と音』(中村隆之著、岩波新書)では、ブラック・カルチャーについて、とりわけ音楽に重点を置いて考察が進められていきます。

●ブラック・カルチャーの空間的な横断性は、象徴的には、アフリカで暮らしていた人々がその土地から引き離され、永遠に戻れなくなる日から始まる。ブラック・カルチャーは、西欧人が実施した大西洋奴隷貿易から始まる、奴隷とされた人々の苦難の歴史を辿ること抜きには語ることができない。

●奴隷とされた人々は世代間継承という困難に向き合いながら、アフリカ由来の文化を各地で継続させていった。その文化の再構築において音楽が果たした役割は計り知れない。北米ではスピリチュアルやブルースといった音楽が生まれ、さらにこれらの音楽を養分にしてジャズ、R&B、ソウル、ラップないしヒップホップが展開し、カリブ海地域や南米ではレゲエ、ルンバ、サンバといったアフリカ系の音楽が誕生していった。

●ブラック・カルチャーの中心をなす音楽は、その基底においてアフリカの伝統と切り離されてはおらず、思想的にはルーツの再構築を志向する傾向を有する。奴隷貿易・奴隷制の経験から生まれたブラック・ミュージックという贈り物を、私たち自身の精神的糧として受け取ることができるならば、どんなに素晴らしいことだろう。

●ジャズはサッチモことルイ・アームストロングから始まったと言われる。その理由に挙げられるのは、このトランペット奏者の途方もない腕前に加え、そのさまざまな音楽上の発明である。集団的演奏の中にソロ・パートを取り入れたこと、スキャットと呼ばれる唱法を導入したことなどである。クラシックに代表される伝統的な西洋音楽はモーツァルトやベートーヴェンなど作曲の偉大な才能で記憶されるのに対し、ジャズの場合には演奏と奏法の才能によって記憶されるのだ。

音楽に疎い私も、本書のおかげで、これまででちんぷんかんぷんだったブルース、ジャズ、R&B、ソウル、ラップ、ヒップホップなどについて、ちょっぴり理解を深めることがで