No.2の仕事術を豊臣秀長に学ぼう・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3868)】



『図説 豊臣秀長――「No2」の仕事術』(中野明著、Gakken)は史料に基づき、豊臣秀長像を構築しているが、その多くを負っている『武功夜話』は専門家の間では偽書であることが明らかになっています。
しかしながら、史実とは多少異なるにしても、本書にはNo.2の仕事術を考えるヒントがてんこ盛りです。
●天下人・豊臣秀吉の弟・秀長は「仕事ができる武士」だった。
●正確無比な判断、抜群の人望、戦場で冷徹に敵をなぎ倒す武力・胆力、秀吉の「無茶ぶり」に期待を超える結果で応える問題解決力。
●豪放磊落な秀吉に付き従い、陰で盛り立てる。
●変革のリーダー秀吉を後方でガッチリと支える。
●秀長が存命なら、豊臣家の将来は変わっていた。
●秀長の卓越した4つの能力――「補佐力」、「財務力」、「調整力」、「EQ力」。「EQ力」とは、自他の感情を察知・調整し、良好な人間関係を築く力。
●裏方をいとわず、「トップの補佐」に徹する。
●主役の陰に隠れつつ、誠実な態度で主役を引き立てる。
●トップの弱みを補い、強みを引き出して成功に導く。
●トップの不在時は、冷静沈着に現場を仕切る。
●手柄を挙げても誇らず、トップや同僚を立てる。
●「何のために働くのか」を明確に意識する。
●周到な準備と段取りで、兵站を取り仕切る。
●調略を駆使して、情報戦を制する。
●組織の要を自覚して、責任を全うする。
●「財務」で支え、盤石な組織運営を実行する。
●人望と信頼で、財務ネットワークを拡大する。
●将来の「商業権」を担保に軍資金を確保する。
●経済、国防の要となる地場産業を保護する。
●「奈良借(ならかし。余裕のある資金を商人に貸し付けて利子を得る)」を考案した秀長の驚くべき投資センス。
●周到な「調整」で、トップの決断をバック・アップする。
●当事者の立場を理解し、納得できる落とし所を見出す。
●組織に派閥を作らせず、文治派と武断派の橋渡しをする。
●部下の失敗に誠意をもって対処し、トップの赦しを得る。
●「仲介役」として、秀吉と大名の関係を良好に保つ。
●入念な事前調整で、相手が負けるのをじっと待つ。
●「負けない戦略」を実行して、勝利の望みを繋ぐ。
●修羅場には調整力だけでなく、「突破力」も求められる。
●リーダーの横暴に対し、勇気をもって「異見」を述べる。
●「聴く力」、「共感する力」で人心を掌握する。
●他者の感情に気を配り、「してほしいこと」を柔軟に実行する。
●言葉や態度のみならず、有言実行で信頼を勝ち取る。
●感情に振り回されず、冷静な態度を貫く。
●感情の「相互調整役」となって、兄・秀吉の怒りをコントロールする。
●身分や家柄を超えて、相手の立場に立つ。
●誠実な接待で重要人物と親密な関係を築く。
●文化や教養を学び、影響力のある知識人と心を通わせる。
●トップの「嫉妬」に巧みに対処する。
私は長らく組織で働いてきたが、これほどできる人物には出会ったことがありません。こういう完璧人間なら、No2どころか、出世は思いのままでしょう。
