榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

成瀬あかりよ、そのまま君の道をひた走れ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3873)】

【読書の森 2025年10月30日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3873)

幸運にも、ジョウビタキの雄をカメラに収めることができました。

閑話休題、天の邪鬼の私は、発刊されるや人気沸騰し、続篇も人気を維持している『成瀬は天下を取りにいく』(宮島未奈著、新潮文庫)は絶対に読まないぞと心に決めていました。

ところが、なぜ、こんなに人気があるのだろうという好奇心止み難く、遂に、手にしてしまいました。

「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」。一学期の最終日である七月三十一日、下校中に成瀬がまた変なことを言い出した――「ありがとう西武大津店」は、このように始まります。

「膳所から来ました」は、こう始まります――「島崎、わたしはお笑いの頂点を目指そうと思う」。九月四日金曜日、成瀬がまた変なことを言い出した。

「線がつながる」に至っては、ここまでぶっ飛んでいます――成瀬あかりが一年三組の教室に入ってきた瞬間、わたしは頭を抱えた。・・・成瀬は坊主頭だった。

成瀬あかりの物言いは、まるで男のようです。「レッツゴーミシガン」では、全国高等学校小倉百人一首かるた選手権大会団体戦の会場で知り合った他校の西浦航一郎から、突然、「成瀬さんは、好きな人いるの?」と聞かれます。成瀬の言葉――「それはつまり、恋心を抱く相手がいるかという質問か?」、「そのような質問をするということは、西浦はわたしが好きなのか」、「この短時間でわたしのどこに惹かれたのか教えてくれないか」。

スマホを持っておらず、毎朝4時59分58秒に目を覚まし、毎晩9時には就寝し、周囲に囚われることなく自分のやりたい道をひた走る、そして、「わたしは二百歳まで生きようと思っている」と宣言する成瀬のことゆえ、次は何を仕出かすのかと、一瞬たりとも目を離せません。因みに、私は105歳まで生きると広言してきたが、最近は、いささか自信喪失気味です。

本作品では、登場人物たちの性格、頭の良し悪し、考え方、行動は記述されるが、女性の容貌についての描写が皆無であることは特徴的です。

天の邪鬼の私は、続篇『成瀬は信じた道をいく』、『成瀬は一日にしてならず』は読まないぞと固く決意しているが、どこまで我慢できるやら(笑)。