榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

邪馬台国畿内説に立つ本書の主張に異議あり・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3925)】

【読書の森 2025年12月19日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3925)

新調した餌台にメジロが一日中、入れ替わり立ち替わりやって来るので、撮影助手(女房)は上機嫌です。

閑話休題、『発掘された日本神話――最新考古学が解き明かす古事記と日本書紀』(瀧音能之監修、宝島新書)は、邪馬台国畿内説に立っています。邪馬台国九州説の私が本書を手にしたのは、畿内説を裏付ける強力な新証拠が示されているのではないかと懸念したからです。

●天岩戸開き神話に象徴される北部九州と瀬戸内海東部・機内の大連合によって誕生したのが卑弥呼政権である。この卑弥呼政権には、アマテラス系統であり北部九州を代表する神聖王(卑弥呼)と、吉備のタカミムスヒ系統で瀬戸内海東部・機内を代表する執政王(男弟)の二重統治体制でスタートしたと考えられる。

●卑弥呼政権の王都があった邪馬台国がどこにあったか、現在でも畿内説と九州説を主として論争が続いているが、ここでは畿内説を取ることにする。3世紀初頭に突如として出現した纏向遺跡は、面積約300万平方メートルに及ぶ巨大集落であり、遺跡全体に水路が巡らされた計画都市だった。さらに発見された建造物は南北約19.2メートル、東西約12.4メートルに及び、付随する建築物の軸線をそろえた最先端かつ最大級の建築物群である。これほどの規模の王都を持つのは、日本列島で卑弥呼政権以外にあり得ないためだ。

●畿内説のウィークポイントは、北部九州の先進性に対して、機内の後進性が挙げられる。・・・卑弥呼政権はアマテラス系統の北部九州とタカミムスヒ系統の吉備を中心とする勢力との連合政権であり、機内は必ずしも中心地ではない。二重統治体制を取るにあたって、北部九州と吉備は互いの本拠地を王都にするのではなく、まだ未開拓の機内が新たに選ばれたと考えられる。

ちょっと待った! 卑弥呼政権が北部九州と吉備の連合政権という仮説は私には受け容れ難いが、王都を敢えて未開拓の畿内にしたという主張に至っては必然性を欠いており、いくら何でも論理的に無理があるのではないでしょうか。