自然を、自然の言葉である量子力学の原理で「計算」できる機械、それが量子コンピュータだ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3993)】
フサザキズイセン(写真1)が咲いています。ジンチョウゲ(写真2,3)が咲き始めました。我が家の餌台の常連のメジロたち(写真5~9)。クレジット・カードやマイナンバー・カードなどの情報抜き取りに対処するためのスキミング防止カードケース(3枚入り、110円。写真10)をダイソーで購入しました。











閑話休題、『教養としての量子コンピュータ』(藤井啓祐著、ダイヤモンド社)のおかげで、量子力学誕生から現在の量子コンピュータに至る100年間の歴史の全体像を俯瞰することができました。
簡にして要を得た巻頭の「量子コンピュータ年表」が、私たちの頭の中を整理してくれます。
そして、本書が凄いのは、歴史を踏まえて、現時点の量子コンピュータの状況のみならず、今後の展開まで言及されていることです。
●量子力学の誕生から100年が経ち、いま私たちは「量子の不思議」を受け入れ、それを制御し応用する時代に入ろうとしている。
●2010年代にグーグルやIBM、マイクロソフト、アマゾンといった巨大IT企業がこぞって量子コンピュータの開発を進め、世界各国で国家プロジェクトが進められてきた。未来のグーグルやマイクロソフトの地位を目指して、新たなスタートアップ企業も続々と登場している。
●実際に量子コンピュータが世界で多数稼働しており、国産量子コンピュータも2023年以降、複数が稼働しはじめている。海外製の量子コンピュータも含めると日本はアメリカに次いで世界で2番目に多種多様な量子コンピュータが集結している国だ。
●量子コンピュータはこれから世界をどう変えるのか? 正直にいうと、私たち研究者にもまだはっきりとはわからない。それが知りたくて量子コンピュータの研究をしている。確かなのは「何かすごいことが起きそうだ」という予感である。そして、そうした予感を信じて手を動かし続けた人たちが、現代のインターネットや生成AIを作ってきた。
●2017年にはマイクロソフトが、アンモニア合成の解析に量子コンピュータが利用できると発表した。アンモニア合成には全世界の数パーセントのエネルギーが消費されているため、食料・エネルギー分野に大きな革命をもたらし得る。グーグルは、人体内に存在する酵素を解析する量子アルゴリズムを開発している。この酵素は、薬の効き目や副作用に深く関係しており、正確な予測ができれば新薬の開発スピードや安全性が飛躍的に高まると期待されている。このような量子コンピュータの応用は、食料・エネルギー・創薬だけにとどまらない。電気自動車に不可欠なリチウムイオンバッテリーの性能改善、夢のエネルギーである核融合のための材料設計など、その可能性は無限に広がっている。
●なぜ量子コンピュータがそこまで幅広く使えるのか? 理由はとてもシンプルだ。私たちの自然界を支配している物理法則そのものが「量子力学」だからである。自然を、自然の言葉である量子力学の原理で「計算」できる機械。それが量子コンピュータだ。これまで地球が46億年という進化の歴史のなかでたどり着いてきた、生命、物質、エネルギーの精緻な構造、その「最適解」を読み解く鍵が、量子コンピュータによって与えられようとしている。
●量子コンピュータは「単なる速い計算機」ではない。自然を深く理解し、人類の知の地平を押し広げる「新しい望遠鏡」であり「顕微鏡」でもあるのだ。
知的好奇心を掻き立てられる、読み応えのある一冊です。
巻末の「量子がもっと身近になる『量子図書室』」の中で、諌山創の漫画『進撃の巨人』も取り上げられています。「巨人(量子)から身を守るために壁に囲まれた世界に住む人類が、壁に外に出ることでより高度な知識や技術に触れ、世界の真実を知ることになる。壁のなかの世界は『古典力学』であり、人類はニュートンの運動方程式で記述できる『予測可能で確定的な世界』を信じている。巨人(直感的には説明できない量子現象)という脅威はあるものの、壁のなかにいる限りは閉じた単純な法則で説明できると信じている。しかし壁の外は『量子力学』の世界が広がっている、そこには常識では説明できない重ね合わせや量子もつれがあり、観測によって現実が形作られている。100年前に量子力学を定式化したハイゼンベルクやシュレーディンガーは、立体機動装置という兵器を生み出した技術者のような存在だろう。壁の外に世界があることを記した主人公エレンの父・グリシャは、ベルの不等式を確立したベルに相当する。そして、果敢に壁の外に飛び出し世界の真実と向き合う、エレンをはじめとする調査兵団たちは、量子コンピュータの開発者たちやプログラマーといえるのかもしれない。未知に挑むその姿勢が、『量子』という新しい知の地平を切り開いてきた科学者たち、グーグルやIBMといった大企業(量子の巨人)の営みに重なる」。
『進撃の巨人』全34巻を読破した私には、『進撃の巨人』を例に引いて著者・藤井啓祐が言いたいことは分かるが、ちと、『進撃の巨人』に対する思い入れが過ぎるのではありませんか。
