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免疫療法に革命を起こした免疫チェックポイント阻害薬・・・【薬剤師のための読書論(24)】

【amazon 『免疫革命 がんが消える日』 カスタマーレビュー 2017年5月6日】 薬剤師のための読書論(24)

免疫革命 がんが消える日』(日本経済新聞社編、日本経済新聞出版社・日経プレミアシリーズ)は、一般向けに書かれた本だが、医療関係者にとっても、がんの免疫療法の最先端を理解する一助となる。

「小野薬品工業が米製薬大手のブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)と共同開発した『オプジーボ(一般名ニボルマブ)』は免疫療法を現実のものとする新薬として医療現場に登場した。2014年9月のことである」。

「(発売当初の適用範囲は悪性黒色腫<メラノーマ>であったが)2015年12月、厚生労働省が肺がん患者のうち80%以上を占める非小細胞肺がんの患者の治療にも使用を認めるようになった。長年、肺がん患者の治療にあたってきた九州大学の中西洋一教授は『オプジーボの登場で肺がん治療そのものが変わりつつある』という」。

これまでの免疫療法とオプジーボとの違いを一言で言えば、こういうことになる。「がん細胞と免疫細胞との間に割って入り、免疫細胞が持つ本来の特殊能力を呼び覚ます。免疫細胞ががん細胞を攻撃しないよう踏み込んでいた『ブレーキ』を足から離させるわけだ」。

「(その高薬価が国の医療費負担を圧迫するとして)約1年近く紛糾したオプジーボの公定価格(薬価)問題は2017年2月から半分になることで決着した。2016年11月16日の中央社会保険医療協議会(中医協)で厚生労働省が薬価を50%引き下げる方針を提案し、中医協もこれを了承した」。

「人が持つ免疫の力を呼び戻すことでがんを治療する免疫チェックポイント阻害薬市場。小野薬品工業の『オプジーボ』に続き、外国勢が参入準備に入った。筆頭格は米製薬大手メルクだ。同社が開発を進める『キイトルーダ』は2017年2月から日本の医療現場で保険使用が可能になる」(因みに、本書の出版は2017年2月)。「キイトルーダはメルクが開発した免疫チェックポイント阻害薬で、小野薬品のオプジーボと同じ免疫細胞のブレーキである『PD-1』という物質に作用する」。「『現時点で、オプジーボとキイトルーダとの間で薬の効果や安全性に大きな違いはないといえる』。帝京大学医学部腫瘍内科診療科長の関順彦氏はこう説明する」。ただし、両者には使用法の違いがある。

「免疫細胞のブレーキ『PD-1』ががん細胞に踏まれないようブロック、人が持つ免疫の力を最大限引き出す免疫チェックポイント阻害薬(免疫薬)に対して、ブレーキを踏むがん細胞の足である『PD-L1』の動きを封じ免疫力を引き出す薬剤の研究も(中外製薬、アストラゼネカ、独メルク+ファイザーで)急ピッチで進む。日本でも早ければ2年後に登場する可能性が出てきた」。