榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

肥満の犯人は、カロリーか炭水化物か・・・【山椒読書論(300)】

【amazon 「日経サイエンス2013年12月号」 カスタマーレビュー 2013年11月1日】 山椒読書論(300)

日経サイエンス2013年12月号」(日経サイエンス社)に掲載されている「どっちで太る? カロリーか炭水化物か」(G.トーベス著、千葉啓惠翻訳協力)の記事は、糖質制限食ダイエットを長期実行中の私にとって大変興味深い。

肥満の原因については2つの仮説がある。1つは、摂取カロリーと消費カロリーのインバランスのせいだという、現在、主流となっている仮説。もう1つは、消化され易い炭水化物に偏った食事の結果だという、少数の医師に支持されている仮説だ。

食べ過ぎや運動不足が原因と考える「カロリー仮説」は、世界保健機構(WHO)のお墨付きをもらっているとはいえ、科学的に検証されたものではない。

「炭水化物を摂取すると血糖値(血中のブドウ糖濃度)が上昇し、その刺激でインスリンというホルモンが放出される。脂肪細胞はインスリンに反応し、脂肪の蓄えが使われにくくなるだけでなく、さらに増えてしまう。そのため炭水化物を食べてインスリン濃度が上昇した状態が長時間続くと体重が増加する」とする「炭水化物・インスリン仮説」と、「カロリー仮説」のどちらが正しいのか。

「ホルモン説(=炭水化物・インスリン仮説)によると、こうした悪循環(炭水化物がインスリン抵抗性を引き起こす→細胞がインスリン抵抗性を示すと、血糖値を下げるのに、より多くのインスリンが必要になる→1日のうちで血中のインスリン濃度が高い時間がどんどん長くなる→脂肪が体内で燃焼されずに脂肪細胞に蓄積される)を解消する唯一の方法は、インスリン濃度を上げる糖類や炭水化物の摂取を避けることだ。そうすれば当然身体は蓄積した脂肪を燃焼するようになる。摂取カロリーの総量を変えなくても、炭水化物の燃焼から脂肪の燃焼に切り替わるだろう。ホルモンが効率的に作用して細胞が脂肪を燃やす結果、身体が消費するエネルギー量が増える。余分な体脂肪を減らすには炭水化物の摂取を制限し、ほかのもので代替すればよい。インスリンの分泌を促さない脂肪は理想的」というのだ。

これは肥満にとどまらず、2型糖尿病(インスリン抵抗性が大きな発症原因)、心疾患、がんなどにも関係してくる重要な問題なので、この際、ヒトを対象とした厳密な比較対照試験で確かめようと、著者らのグループが立ち上ったのである。早くとも、結果が出るのは5~6年後とのことだが、今から楽しみだ。