榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

徳川慶喜が配下に坂本竜馬殺害を禁じていたのに・・・【情熱的読書人間のないしょ話(444)】

【amazon 『歴史と小説』 カスタマーレビュー 2016年7月6日】 情熱的読書人間のないしょ話(444)

散策中に、ツマグロヒョウモンの雄に出会いました。直径が3cm近いミスジマイマイを見つけました。シマトネリコが白い花を咲かせています。橙色のヤブカンゾウ、薄赤紫色のムクゲも頑張っています。我が家では、白いキキョウと黄色いガザニアが咲き始めました。因みに、本日の歩数は10,423でした。

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閑話休題、司馬遼太郎の歴史小説は面白いが、エッセイも楽しめるということを、久しぶりに『歴史と小説』(司馬遼太郎著、集英社文庫)を読み返して、再認識しました。

とりわけ、「竜馬の死」には司馬らしさが凝縮しています。

「新選組で人斬りといわれた大石鍬次郎は、甲州での幕軍再起の挙がくずれてから板橋で官軍に捕縛された。このとき、『竜馬暗殺は新選組のしごとではない。見廻組である。事件の翌日、近藤勇らが、剛勇の竜馬を仕止めた見廻組の今井信郎、高橋某のはたらきは感賞するに足る、といっていたのをきいたことがある。この記憶にまちがいはない』と申し述べた。この大石の口から下手人の隊名と固有名詞がはじめて出た」。

「今井(信郎)の供述によれば、刺客団は、佐々木唯三郎、今井信郎、渡辺吉太郎、高橋安次郎、桂隼之助、土肥仲蔵、桜井大三郎である」。

「中岡(慎太郎)は、卓抜した評論家である。かれは難に遭い、死に瀕しつつも、駆けつけた同志の連中にさまざまなことを言った。『卑怯憎むべし。剛胆愛すべし』と、自分たち二人を討った刺客の引きあげの見事さをほめている。刺客が二階座敷からひきあげるとき、『一人の男は、謡曲を謡ってやがった』と中岡は医師に介抱されながらいった。・・・『坂本と自分をやるなどは、よほど剛強の男であろう。幕士は腰抜けである、と平素あなどっていたが、こう思いきったことのできる男がいる。早くやらねば逆にやられるぞ』。中岡は最後までその主戦論をすてなかった」。

これらのエピソードは非常に興味深いのですが、私が一番驚いたのは、徳川慶喜に関する件(くだり)です。「この(竜馬)暗殺の直前、二条城にいる徳川慶喜が、たれの口からきいたか、竜馬の名を知った。その竜馬が大政奉還の立案者であり、かつ反幕志士のなかで唯一の非戦論者であることも知った。むしろ慶喜は竜馬において同志を見出した思いがあったのであろう。『土州の坂本竜馬には手をつけぬよう、見廻組、新選組の管掌者によく注意しておくように』と永井尚志に言いふくめた。永井はむろんよく竜馬を知っている。当然とおもい、翌朝、慶喜の言葉を管掌者に伝えるべく出仕したところ、机の上に紙片がおかれている。紙片には、昨夜、竜馬を暗殺した旨、躍るような書体で大書されていた。――遅かった。と、永井は思ったであろう。事実、竜馬が生きていれば鳥羽・伏見の戦いはおこらなかったかもしれない。暗殺はつねにこのようなものである」。

歴史小説執筆に取り組むに当たっては、関係書籍・文献・資料を神田神保町の古本屋からトラックで運び出すほど大量に買い求めたと言われる司馬の面目躍如です。