榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

縄文人が日本人の祖先であることが、最先端のDNA研究で解明された・・・【情熱的読書人間のないしょ話(729)】

【amazon 『DNAでわかった日本人のルーツ』 カスタマーレビュー 2017年4月17日】 情熱的読書人間のないしょ話(729)

茨城・桜川の岩瀬は、ムギが青々と育ち、溜め池や棚田の水面に木々が映るなど、里山の風景が広がっています。イノシシ除けの案山子や鉄製の罠を見かけました。レンギョウ、ミツマタ、ハナモモが咲いています。アオキの雌花と雄花を見つけました。

閑話休題、『DNAでわかった日本人のルーツ――最先端科学が明らかにした縄文人』(斎藤成也監修、宝島社・別冊宝島)によって、日本人のルーツ研究の最新の成果を知ることができました。

「現代の日本人がどのように成立したかについては、縄文人が弥生人に転換したという変形説、縄文人の一部がアイヌや琉球人として残り、本州、九州、四国のほとんどは渡来系の弥生人に置き換わったという置換説、もともといた縄文人と、渡来系の人々が混血したという混血説の、大きく分けて3種類の説がありますが、DNA解析などの結果、今では混血説が一番受け入れられているという状況です」。

「アフリカを出た人類集団は各地に移動し、一部は東ユーラシアにもやってきた。日本列島には、かなり早い段階で到達し、日本列島に入ってきた集団は遺伝的に孤立し、彼らが縄文人の形成に強く影響したと考えられるということになります」。

「アイヌ人、琉球人、本土日本人がそれぞれ遺伝的に縄文人に近いということは、縄文人の遺伝要素を受け継いでいるということが、日本列島人の一つの遺伝的特徴であると、そういうことを示していると言えるでしょう」。「日本列島人は、縄文人の遺伝子を受け継いだ存在であり、その点で、大陸や半島の人々と遺伝的に異なる存在であると考えられます」。

「旧石器時代に日本列島にやってきた人々が根付き、独自の遺伝子を持った縄文人となった。その後、大陸や半島から縄文人とは異なる遺伝子を持った集団が日本列島に移住し、先住民である縄文人と混血し、現在の日本列島人が生まれたという(二重構造論の)モデルについて、補強されたということです。アイヌ人と琉球人は、縄文人の遺伝要素を強く残していて、本土日本人も縄文人の遺伝要素を、強くではないが残していると考えられます」。

生存に有利でも不利でもない突然変異こそが進化の原動力ではないかと考えた木村資生の「中立進化論」も分かり易く解説されています。「木村が提唱した中立進化論は、同義(=アミノ酸を変えない)突然変異のような中立突然変異を持った個体が偶然に生き残り、その子孫が増えた結果、中立突然変異が定着して進化を起こすというものだった。まったくの偶然により突然変異が広がって、生物の進化が起きるという考えだ。・・・(木村の)『進化の4段階説』は、カンブリア紀に起こった爆発的な生物の進化や、恐竜絶滅後にあらわれた哺乳類の急速な拡散をうまく説明していると考えられている。さらに、ゲノム解読技術が発展したことで、現実に中立突然変異が多くの生物のDNAに蓄積していることが確認されており、発表直後は猛烈な批判にさらされた中立進化論であったが、今では広く受け入れられている」。

中立進化論について、より深く学びたい人には、『生物進化を考える』(木村資生著、岩波新書)をお薦めします。

日本人ルーツ論の本は数多く出版されていますが、本書は最も明快に説明されていると言えるでしょう。