榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

全ての動植物に名前を与えることが自分の使命だと、情熱を燃やし続けたリンネ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(826)】

【amazon 『リンネ――医師・自然研究者・体系家』 カスタマーレビュー 2017年7月27日】 情熱的読書人間のないしょ話(826)

女房が、アゲハたちが飛び交う綺麗な花が咲いているというので、早速、見に行きました。一面に、桃色、薄紫色、赤紫色、白色の花が咲き乱れ、アゲハチョウ、キアゲハ、クロアゲハ、ナガサキアゲハなどが群がっています。いろいろ調べても、この花の名前が分からないので、植物に造詣の深い柳沢朝江さんに問い合わせた結果、フロックス・パニキュラータ(宿根フロックス、クサキョウチクトウ)と判明しました。「フロックス」が属、「パニキュラータ」が種です。因みに、本日の歩数は10,623でした。

動植物の名前を知ろうとするとき、カール・フォン・リンネが確立した分類法――属と種で表す二名法――を目にすることになります。

そこで、リンネとはどういう人物なのか知りたくて、『リンネ――医師・自然研究者・体系家』(ハインツ・ゲールケ著、梶田昭訳、博品社。出版元品切れだが、amazonなどで入手可能)を手にしました。

体系家(分類学者)としてのリンネは、動物界・植物界・鉱質界の全てのものに名前を与えることを、神から委託された自分の使命と考えていました。「自分がつねに神のそばにいるという確信、加えて、自分が『第二のアダム』として自然を秩序づけ、三界(=動物界・植物界・鉱質界)の成員に名前を与えることを創造者から委託された。そのことによって、自分がとくべつな立場にあることへの感謝、これがかれの宗教観を特徴づけている。この時代の、他のいかなる自然研究者といえども、かれのように、神に選ばれたという感情と確信を抱き、神の恩寵をかくも明瞭にいい表したものはいない――同僚のだれであっても、科学の上で、自分に伍し、あるいは自分をしのぐものがあるはずがない。なぜならば、自分だけが、神の委託を受けているからである。こういう使命感に、かれは自分の書き物のいろいろな場所で明瞭な表現を与えている。とくにかれの自伝ではそれが著しい」。自信満々のリンネは、迸るような情熱を持って自分の仕事に取り組んだのです。

「かれの仕事の基礎になった『自然の体系』(1735年)では、自然はアリストテレスの根本原理に従って三界に区分されている。『石は成長する。植物は成長し、生きる。動物は成長し、生き、感じる』という、それぞれ異なった特質によって、それらは鉱質界、植物界、動物界に分けられるのである。この著作が、自然科学的体系学の正典と呼ばれるのは当然であっ」たのです。

「秩序づけとはいっても、リンネの関心が、植物界に偏ったことは明らかであり、この分野での、体系家としてのかれの意義はとくに大きい」。

「かれの植物体系の発展は、さらに『自然の体系』の後年の版において具体化されるし、もう一つあげれば『植物の種』で、これは2巻、全部で1,200頁からなる大冊であり、リンネ自身、これを代表作と見なしているのは当然といえる。この著作は、かれみずから行なった観察で満たされているのが特徴である。ウプサーラの植物園や、旅行中に観察したもの、スウェーデン以外の植物学者から贈られた種子からリンネが育てたもの、こういった生の植物がまず材料になった。それに、多くの乾燥ないし腊葉標本があった。それらは世界中から、交換とか、贈り物の形で送られてきたもので、もちろんその中には、弟子たちからのものもあった。こういうことで、かれの植物標本は、その時代に、これを凌駕するものはまったくないくらい、豊富な内容だったのである。そしてもう一つ、『植物の種』がまったく特殊な意義をもったのは、そこで初めて、二名法による統一的な命名が行なわれたことである」。

「リンネがつけた、多くは今日も通用する、無数の動物、とりわけ植物の名前を思ってみよう。それこそ、かれの永遠の影響を明らかに示すものである。植物名のあとのL.の文字がかれの著作権を示すことは、世界中の人が知っている」。

本書では、リンネの多面性――自然研究者、医師、薬物学者、旅行記作家としての活動――にも言及されています。

私は毎日10,000歩以上歩くことを目標にしており、その際はデジタルカメラを必ず持参し、出会った動植物の撮影を楽しんでいます。その被写体となった動植物の名前を調べるたびに、リンネの偉大さを思い知らされるのです。