榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

寄生したハエの幼虫や菌にマインドコントロールされるアリたち・・・【情熱的読書人間のないしょ話(945)】

【amazon 『たいへんな生きもの』 カスタマーレビュー 2017年11月19日】 情熱的読書人間のないしょ話(945)

千葉・野田の東京理科大の理大祭で、暫し学生気分を味わうことができました。薬学部の広場の移動動物園で、ヤギ、ハクビシン、シベリアシマリス、ゴールデンハムスター、ハツカネズミ、シチメンチョウ、ウコッケイ、アオメキバタン、ジャコビンバト、キュウカンチョウを間近で見ることができました。因みに、本日の歩数は12,271でした。

閑話休題、『たいへんな生きもの――問題を解決するとてつもない進化』(マット・サイモン著、松井信彦訳、インターシフト)のあまりにも恐ろしい内容に、心も体も震えました。

「アリ断頭バエは、生きたアリの体内に卵を外科手術で挿し入れる。生まれたうじは頭部へ移動し、宿主をマインドコントロールして落ち葉だまりへ導くと、アリの頭部を落とす化学物資を放つ。そして落ちた頭部の中で、ベビーベッドに寝かされた赤んぼうのように安全に育つ」というのです。この被害者のアリは、最近、我が国でも危険な外来生物として話題になった南米産のヒアリ(火蟻)です。ヒアリの体内で孵化したアリ断頭バエの幼虫(うじ)は、ヒアリの精神をコントロールする化学物質を調合して放ち、ヒアリのコロニー(集団)から連れ出し、落ち葉が積み重なっている場所まで導くというのですから、驚きです。

「グリプタパンテレス属にはこんなハチがいる。母親が、生きたイモムシの体内に卵を挿し入れる。生まれた幼虫は体液を吸って育ち、宿主の体から一斉に吹き出てくると、哀れな宿主をマインドコントロールして、ボディーガード/ベビーシッターとして自分たちを守らせる」。イモムシの体内に産みつけられた80個ものハチの卵が孵化し、その幼虫たちが次から次へと1時間かけてイモムシの体から一斉に吹き出てくるシーンを思い浮かべると、背中がぞくぞくしてきます。「イモムシの体のそこらじゅうからうじが身をくねらせながらわいてくるのだから」。

「オピオコルディケプス属の菌類の何種かは、アリの脳に侵入すると、宿主をマインドコントロールして樹木の所定の範囲へ誘導し、ゾンビと化したそのアリを葉脈にかみつかせてから息の根を止める。そのうえで頭から柄を伸ばし、下を歩く仲間のアリに胞子を雨あられと振りかける」。この菌類の胞子は、オオアリに付着し体内に入り込むと、3週間で、菌の重さがアリの体重の半分になるほど猛烈に増殖するというのです。「アリはそのあいだも普通に振る舞い、歩きまわっては日々その日にやると決めたことをやり、仲間はそんな厄介者が身内にいるとは思いも寄らない。突然、そのアリが姿を消す。正午頃にコロニーを抜け出せと菌が命令したからだ」。

進化の結果とは言いながら、このようなケースもあるのです。恐ろしや。