外人部隊の兵士と、流れ者の歌手との恋の物語・・・【山椒読書論(428)】
【amazon DVD『モロッコ』 カスタマーレビュー 2014年3月23日】
山椒読書論(428)
気が滅入ったときは、戦前の映画『モロッコ』(DVD『モロッコ』<ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督、ゲイリー・クーパー、マレーネ・ディートリッヒ出演、ファーストトレーディング>)を見ることにしている。
ストーリーは至ってシンプルだ。北アフリカのモロッコの町にドイツ軍の外人部隊が駐屯しており、その中に、女たらしの兵士、トム・ブラウンがいた。そこに、アミー・ジョリーという歌手が流れてくる。彼女の部屋での、二人の会話が洒落ている。「自由に生きるのが理想ね?」、「女に縛られた事はない」。「もう帰って あなたを好きになりそう」。「たくさんの女と出会ってきたが このセリフは一度も言ってない 10年早く会いたかった」。
男も女も、いろいろ過去を背負っているに違いない。しかし、何の前触れもなく、突然、恋は舞い降りてくる。トムとアミーの間で交わされたのは、会話とキスだけなのに、これは間違いなく恋の物語なのだ。それも、最高の。
アミーが町一番の大金持ちから結婚を申し込まれたことを知って、トムは自ら身を引く。勇ましい太鼓の音とともに前線へ出発していくトムらの外人部隊の後ろを、兵士たちを慕う女の一群が付いていく。そして、その後をアミーが追いかけていく。邪魔になるハイヒールを脱ぎ捨て、砂漠を裸足で。この印象的なラスト・シーンは、古い映画ファンの間ではよく知られている。
1930年に公開された映画なのでモノクロ、しかも映像が鮮明とは言い難い。しかし、この究極の愛の物語は、人間関係に疲れたあなたを癒やしてくれることだろう。