「過去と他人は変えられない」は間違いだ、過去は変えられる・・・【MRのための読書論(129)】
過去は変えられる
『人生は「捉え方」しだい――同じ体験で楽しむ人、苦しむ人』(加藤諦三著、毎日新聞出版)に若い時に出会っていたら、私の人生はもっと充実したものになっていたことだろう。
著者は、「変えられないのは過去と他人、変えられるのは未来と自分」という言葉に異議を唱える。確かに過去は変えられない。そして過去から被った影響も変えられない。しかし、過去という事実の解釈は変えられる。自分の過去を否定し続けていた人が、思い切って過去を受け容れれば人生に劇的な変化が起こるというのだ。「変えられない過去を正しく分析し、未来に対して正しい態度を取る。これが決定的に重要である」。私たちは事実によって影響されるのではなく、その事実の解釈によって影響される、このことに気づいた人は、これまでとは異なる人生を歩み始めるのだ。
事実と解釈
毎日を辛い気持ちで送っている人がいる。そういう人は「事実に苦しんでいるのではなく、事実に対する解釈で苦しんでいるにすぎない。その上その解釈が唯一の解釈としか考えられない人々である。自分の解釈は間違っているということに気がつけば、事実は変わらなくても気持ちは変わる」。事実はどうでもよいというわけではないが、私たちは解釈の重要さを忘れてはならない。
「事実で不満になっているのではない。事実に対する解釈で不満になっている」、「自分がダメであることと、ダメだと思うこととは違う」、「同じ苦しみでも、その苦しみをどう解釈するかで、耐えやすくもなるし、耐えがたいものにもなる」
――というのだ。
自分を変える
経済的苦しさばかりでなく、人生にはさまざまな種類の苦しさがある。自分は苦しみに耐えた、苦しみを乗り越えたという解釈が、自信に繋がる。「試練は辛いけれども人間の成長には歓迎すべきもの、幸福への扉でもある」。変えられることは変える努力をする、変えられないことは受け容れるというメリハリが大切である。人間が大きくなるためにはプラスもマイナスもさまざまな体験が必要だと割り切り、じたばたしないことだ。
価値観
人がある偏った価値観に囚われているときは、危険である。例えば、一流大学卒という価値観に囚われている人は、社会に出て挫折したとき、思い知るだろう。「それよりも人生を生き抜くためには、その人が優しい人かどうか、コミュニケーション能力があるかどうかの方がずっと重要なことだとわかる」。
偏見
「事実に対する自分の解釈が自分を侮辱しているのに、事実が自分を侮辱していると思う。そこで事実を歪めてしまう。それが偏見である」。人は自我価値の剥奪から自分を守ろうとして偏見にしがみつく。そうして自分の人生の可能性を捨てていくのだ。
幸せな人間
「ささやかな喜びを感じられること、それはその人が幸せな証拠である」。欲求不満の人はささやかな喜びを感じることができない。自分が自分であることを否定した人は、ささやかな喜びを感じることができない。
視点を増やす
著者は、新しい人生を開くための方法として、視点を増やすことを勧めている。「最大のパラダイム・シフトは自己憎悪から自己受容へ、その人の自己イメージが変わることである」。自己憎悪は外に向けるはずの憎悪が自分に向けられた結果であり、抑制型の人の欲求不満が自己憎悪である。具体的には、「なぜ?」と考えることで、視点が増えてくる。「嫌いだ、嫌いだ」と言っているだけでなく、「なぜ嫌いなのだろう」と考えるのだ。視点を増やすことは幸運の扉を開く。
戻る | 「MRのための読書論」一覧 | トップページ