著者の70年を超える昆虫観察の成果が凝縮した、昆虫ファン垂涎の一冊・・・【情熱的読書人間のないしょ話(725)】
読み聞かせヴォランティアの仲間たちと訪れた山梨は、濃桃色のモモの花に包まれた別天地でした。日本最高峰の富士山、第2位の北岳(ソメイヨシノの奥の右の山)、第3位の間ノ岳(ソメイヨシノの奥の左の山)、八ヶ岳の山々を眺めることができました。因みに、本日の歩数は12,912でした。
閑話休題、『昆虫のすごい瞬間図鑑――一度は見ておきたい! 公園や雑木林で探せる命の躍動シーン』(石井誠著、誠文堂新光社)は、昆虫の命が生まれる瞬間、大変身を遂げる瞬間、獲物に襲いかかる瞬間、身を潜めている瞬間、雄と雌が出会う瞬間など、決定的なシーンの連続で、枚挙にいとまがありません。
「昆虫たちには、多くの競争相手がいる。常に他の虫や鳥などの外敵から襲われ、食べられる危険と向き合っている。同種の中でも交尾競争をして、子孫を残すために必死になっている。すべてに気配りしながら、最小限度の被害に食い止め、種として生き抜いてきたものたちが、今身近で生き残っている。都市近郊、その周辺の里山に生息している普通の虫たちこそ、環境の変化、外敵対応などあらゆる危機に見事に対応してきた、最強の昆虫だと思うのだ。虫の『生き残りチャンピオン』といえる身近な種たちの生き残りの戦術、戦略をぜひみなさんにも観察していただきたい」。
私もかなりの虫好きですが、ぜひ目撃したいと目を瞠らされた場面が目白押しです。
「黄色い翅、赤いツノ――キバラヘリカメムシ」の「成虫は翅が茶色いカメムシだが、羽化直後の瞬間だけ、全体が鮮やかな黄色。さらに真っ赤な触角をもった美しい虫になる」。
エサキモンキツノカメムシの「きれいに光る緑色の卵。一度に100個ぐらい産み落とされる」。
セミヤドリガ。「ヒグラシに寄生したセミヤドリガの幼虫たち。繭に覆われた白いものは終齢幼虫。赤茶色をしているのが2~3齢の幼虫。セミから養分をもらって成長するが、(セミが)死んでしまうほどは養分をとらず共生する」。
「泡の中から溢れ出す――オオカマキリ」。「成の暖かくなった頃、冬を越したオオカマキリの泡のような卵から、小さなカマキリの幼虫たちが次々と誕生してわき出してくる。幼虫たちはそれぞれ散らばり、さっそく獲物の捕獲にとりかかる」。
「カラフルな大変身――アカスジキンカメムシ」が「神秘的なのは、卵から孵化してからの体色変化である。変わっていく色彩ひとつひとつがそれぞれ素晴らしい瞬間なのだ。そして、死んでしまうとその鮮やかな緑が消え、色が暗くなって変化も終わりを迎える」。
「葉っぱと同化!――チズモンアオシャク」。「まるで葉っぱの一部のようなチズモンアオシャク。地図という名だが、擬態しているのは枯れかけの葉っぱだ」。
「4種類のカップル――オンブバッタ」には「緑色のものと褐色のもの、2色の種類がいるが、オスがメスの背中にオンブされている姿を観察すると、4通りの組み合わせが全部ある。カップルは『オス緑+メス緑』、『オス褐色+メス緑』、『オス緑+メス褐色』、『オス褐色+メス褐色』。どの組み合わせが多いか調べてみるのも面白い」。
キゴシハナアブの「黄色と赤のまだらな模様の眼が実に不思議だ」。
ナミテントウ。「木肌に寄り集まって集団越冬するナミテントウ。冬にしか見られない大集団だ。この機会に藻様を見比べてみると面白いが、どのテントウムシもすべて模様が違っている」。
著者の70年を超える昆虫観察の成果が凝縮した、昆虫ファンには垂涎の一冊です。