消えつつある昭和の風景に哀愁の風が吹く・・・【情熱的読書人間のないしょ話(732)】
あちこちで、サクラの一種、ウコンが薄黄色の花を咲かせています。女房お気に入りのパン屋に立ち寄りました。アイスランドポピーの花が揺れています。濃桃色のシバザクラ、薄紫色のシバザクラも頑張っています。因みに、本日の歩数は10,914でした。
閑話休題、『東京ノスタルジック百景――失われつつある昭和の風景を探しに』(フリート横田著、世界文化社)は、消えつつある昭和の匂いがぷんぷんする写真集です。
「古い街並みをグッとくるか否かで見、感情に流されながら描いてみたものである」。
本書では、残念ながらその姿を消すことが決まったものを信号機のように「赤」、そのままの姿では存続が難しくなってきたものを「黄」と色分けし、各風景の名前の横に小さな○マークで表示しています。
新橋駅日比谷口真ん前にあるニュー新橋ビル(黄信号)――「東京には暗がりが必要だ。ニュー新橋ビルには、それがある。・・・東京には、こんな洗練とは程遠く、雑多でありながらもどこか懐かしい場所、暗がり、がまだある。光の下では我々はまぶしくて生きられない。暗闇に逃げ込んで一息つきたい。『ニュー新橋ビル』は、それをかなえてくれる『おじさんのゆりかご』なのである」。私は今も時々ここで仲間と一杯やるのですが、このごった煮のごとき空間は、なぜか心が落ち着くのです。
今川小路(黄信号)――「神田駅から線路沿いを南に数分歩き、細い路地を抜けると『今川小路』、と暗赤色で大書された看板が見えてくる。その下まで行けば思わず息を呑む。そこに、昭和20年代築の木造2階建ての飲み屋がギュッと建て込む、誠に小さな横丁が突如現れるから。高架橋が作る翳の下、ほんの小さなスペースに、高度経済成長前夜の東京の一場面がいまも保存されている」。会社から近かったので、ここの一杯飲み屋で議論を戦わせたことを懐かしく思い出します。
西銀座JRセンター・インターナショナルアーケード(黄信号)――「知ることは悲しみなのか、有楽町の謎の幻想通路。・・・窓がなく日の差さない秘密の通路。通路に面して店舗が連なって入っていたようだが、いまはほとんどシャッターが下り、ひと気が少ない。暗いコンクリートの色味、蛍光灯の青白い光、それらに囲まれ奥が見えない不安感を抱きながら歩いていくと、とてもここに書けないような東京の暗部に出くわす・・・ということは特にない。けれど、不思議な魅力は確かに持った『西銀座JRセンター』という一角が、有楽町駅・新橋駅間の高架下にある」。この寂れた感じが強烈に漂う通路を実際に歩くと、どこか外国に来たかのような錯覚に襲われます。
どの風景も、赤信号、黄信号ばかりなのが、気がかりです。