私を真の読書少年に変えた本・・・【続・独りよがりの読書論(29)】
58歳で亡くなった父は、私が子供の頃、会社勤めから帰宅後も休みの日も時間があれば、座敷で本を読んでいました。書斎の本棚に入り切らなくなった本が、家のあちこちに雨後の筍のように積まれていました。90歳の現在も毎日元気に出歩いている母は、当時、月末になると私を近くの本屋に連れて行き、私が希望する本を買ってくれました。
こういう環境の中で、私は本に親しむ子供時代を送ったのですが、小学3年生の時、大きな転機が訪れました。8歳の誕生日祝いに両親から贈られた本『アラビアン・ナイト――ペルシア説話』(久保喬文、武部本一郎絵、偕成社・カラー版 世界の幼年文学。出版元品切れだが、amazonなどで入手可能)が私を目覚めさせたのです。残念ながら、その本は今、手元にありませんが、それに収められていた『三つのたからもの』の筋は鮮明に覚えています。
「物を言う鳥」、「歌を歌う木」、「金色の水」という三つの宝物を探しに遠い東の国の高い山に向かった上の兄が、何日経っても戻ってきません。兄に何か変わったことが起こったに違いないと心配する妹に、下の兄が今度は自分が行くと告げます。そして、下の兄も戻ってこなかったのです。
そこで、大事な兄たちを探しに、妹が遠い東の国へ向かいます。そこの大きな山に登る途中で、さまざまな脅しや悪口が聞こえてきて、振り向くと石に変えられてしまうという難関を乗り越えて、妹は頂上に辿り着きます。そこで三つの宝物を手に入れ、黒い石に変えられていた兄たちを救い出すことができたのです。
この波瀾万丈の物語は、私にとって衝撃的でした。ワクワク・ドキドキしながら読み終わった時、私は真の意味での読書少年に生まれ変わっていたのです。
少年少女時代にいい本に出会えるか否かは、その後の人生に大きな影響を及ぼします。この意味で、読み聞かせヴォランティアは大切な役割を担っていることを自覚し、リハーサルを重ねています。子供たちが目をきらきらさせる姿を思い浮かべながら。