松浦弥太郎が語りかけてくる言葉は、心に沁みます・・・【情熱的読書人間のないしょ話(760)】
我が家の庭の片隅で、トリトニアの赤い口紅をつけたような桃色の花が咲いています。桃色のサツキが咲き出しました。散策中、桃、黄、茶の色のハーモニーが美しいアルストロメリアの花を見かけました。この季節、あちこちから柑橘類特有の芳香が漂ってきます。この白い花はナツミカンですが、ユズ、レモン、ダイダイ、キンカンなどの香り、花もよく似ています。因みに、本日の歩数は10,568でした。
閑話休題、『泣きたくなったあなたへ』(松浦弥太郎著、PHPエディターズ・グループ)が語りかけてくる言葉は、心に沁みます。
「自分がしてもらって嬉しいことは何かと考える。嬉しいかもしれないということを探す。それをとことん考えたり、探したりするだけでなく、ひとつひとつはっきりさせて、人や社会に対して、誰よりも早く、実際に行う、照れずにやってみる。もう無限に、ばかになって、躊躇せず、そのことに精いっぱい尽くす。自分がされて嫌なこと、悲しいこと、傷つくこと。悲しいかもしれないということを探す。それをとことん考えたり、探したりするだけでなく、ひとつひとつはっきりさせて、何があろうと、しない、と心を強くする。まわりの全員がそうしたとしても、自分はしない。一人きりになってもしない。人からしてもらって嬉しいこと。人からされて嫌なこと。僕はこのふたつの感受性を人一倍高めたいと思っています。そして、このふたつについて人一倍、想像力を働かせたいと思っています」。これは、ぜひ、私も見倣いたいと考えています。
「僕はこう思った。人を思いやるって、自分が誰かに思いやってもらった時に嬉しかったこと。しあわせに思ったこと。あったかい気持ちになって、深く安心したこと。そういったいわば、自分が人と深くつながることができたと経験したことを思い出して、その人を助けたいと思った時に、真似をするというか、学んだことを思い出すというか、そう、人を愛するというのも同じような」。人と人との関係は、こうありたいですね。
「ひかり。それはすなわち、どんなものでも先入観を捨てて、低いものの中から高いものを。汚れたものの中から美しいものを、にごったものの中から透明なものを見つけるまなざし。心の目を開くこと。そこにあるひかりを。そう。『観察』は、目に見えないひかりを見つめるということかもしれません。そして、勇気。一日の中で、どのくらい心を働かせて、目に見えない、はっと思うひかりを見つけられるのか。それは、暮らしや仕事、人の様子に好奇心を持ち、すなおで、飽くなき観察者の瞳を持つこと」。こう言われると、「ひかり」が特別な意味を帯びてきます。
「むつかしいことをやさしく。やさしいことをふかく。ふかいことをゆかいに。ゆかいなことをまじめに。まじめなことをだらしなく。だらしないことをまっすぐに。まっすぐなことをひかえめに。ひかえめなことをわくわくと。わくわくすることをさりげなく。さりげないことをはっきりと。書くこと。 ノートを買うと、必ず一ページ目に、僕はこの言葉を書いています。これは作家の井上ひさしさんが、ご自分の仕事に対する姿勢を言葉にしたもので、いわば、井上ひさしさんのきほんです。なんてわかりやすく、なんて当たり前で、なんてまっとうで、なんて人間らしく、なんてすてきなんでしょう。もう何年も親しんでいる言葉にもかかわらず、読むたびに感動する、すばらしい知恵のひとつ。井上ひさしさんの作品すべてをこのきほんが支えているのです。読むと元気になる言葉でもあります。井上ひさしさんは、言葉の最後に『書くこと』と記しています。ぜひそこに自分の言葉をあててみてください」。この自らの執筆姿勢を表現した井上の言葉は、井上の神髄そのものです。
本書には、他にも、心に沁みる言葉がたくさん綴られています。