アジサイの花が青くなるのは、有害物質アルミニウムの仕業・・・【情熱的読書人間のないしょ話(797)】
散策中、ハルシャギク(ジャノメソウ、ジャノメギク)の花の黄色と濃赤褐色のコントラストが目を惹きます。アークトチス(ハゴロモギク)が赤い花を咲かせています。ホタルブクロが釣り鐘状の白い花を付けています。ヘメロカリスの赤い花は中心部が黄色くなっています。因みに、本日の歩数は10,955でした。
閑話休題、『アジサイはなぜ葉にアルミ毒をためるのか――樹木19種の個性と生き残り戦略』(渡辺一夫著、築地書館)は、19種の樹木の生き残り戦略に迫っています。「樹木は、一見似たような姿をしていますが、それぞれ強い個性をもっていて、生き残るためにさまざまな戦略を使います」。
アジサイは毒を捨てる技を身に付けているというのです。
「手毬のような花をつけるアジサイは人工的に改良された園芸品種であり、そのもととなった原種は、野生種の『ガクアジサイ』である。・・・ガクアジサイは、装飾花と両性花をもつ。オシベとメシベを備えた小型の『両性花』が花の中心にあり、花粉を出したり種子をつくる生殖の機能を担っている。両性花の周りを、白や青の、大きめの『装飾花』が額縁のように縁取る。装飾花にオシベやメシベはない。彼らには生殖の役割はなく、『広告』が仕事だからだ。目立つことによって、花粉を運ぶ虫をひきつけようとしているのである」。
「アジサイの花の色は、土壌によって変わることがよく知られている。土壌がpH5.5以下の酸性に傾くと、青い花が咲き、pH値がそれ以上のアルカリ性に傾くと、赤みを帯びた花が咲く。そのメカニズムにはアルミニウムがかかわっている。アジサイの装飾花の細胞の中には、『液胞』という液体で満たされた『袋』があり、その中にはアントシアニンという色素が含まれている。アントシアニンは赤と青のどちらの色も生み出すが、この色素の赤みが強いと、アジサイの花は赤くなる。一方、土壌中のアルミニウムを吸収したアジサイは、液胞の中で赤いアントシアニンにアルミニウムが作用して青いアントシアニン色素ができる。その結果、花色が青くなるのだ」。
いよいよ、ここからが本題です。「液胞にはいろいろな役割があるが、不要なものや有害なものを閉じこめる役割もある。いわばゴミ袋のようなものだ。アルミニウムはアジサイにとって根の成長を妨害する有害な物質である。そこで、アジサイは、アルミニウムを液胞の中に閉じこめて拡散を防いでいる。・・・アルミニウムは土壌中に普通に存在するが、酸性土壌ではアルミニウムが水に溶け出しやすく、根からよく吸収されるので、アジサイは鮮やかな青い色を示す」。この説明で、我が家の庭のある場所では青色のアジサイが、ある場所では桃色のアジサイが咲く謎が解け、気分がすっきりしました。
「アジサイは、葉、花、茎、すべてにアルミニウムが貯蔵されているが、特に葉に多く含まれている。アルミニウムは、葉の内部に閉じこめられたまま、落下し、やがて土に返る。つまり、葉に蓄えられたアルミニウムは、落葉に際にアジサイの体から捨てられるのである」。
散策中によく見かけるレッドロビンは、なぜ春にも秋にも鮮やかな赤い葉を付けるのでしょうか。
「カナメモチは、刈り込みに強く、枝葉が茂り、常緑で、若葉が赤くて美しいことから、垣根としての評価は高かった。特に葉の赤いタイプが『ベニカナメ』という品種名で販売され、よく垣根に植えられていた。しかし、やがてある問題が起こってベニカナメは次第に植えられなくなっていく。その問題とは、ごま色斑点病という伝染病である。・・・そこで、ベニカナメにかわって1970年代以降に流行し始めたのが、『レッドロビン』という新しい品種である」。カナメモチとオオカナメモチの交雑種であるレッドロビンは、親の2種よりも優れた性質を獲得しています。どちらの親よりも若葉の赤みがより鮮やかになり、さらに、親たちよりも寒さに強くなったのです。
「レッドロビンの鮮やかな赤い葉は、長い期間観賞できる。春に赤い若葉を出すが、夏の終わりに刈り込むと、秋にも新芽を出し、赤い葉を楽しめるのである。・・・野生のカナメモチは、自然の種子散布によって1年に30メートルしか広がらなかったが、その雑種のレッドロビンは、ここ数十年で寒冷地を除く日本中に広まったのである」。レッドロビンが春だけでなく秋にも赤い若葉を身にまとう理由が明らかになりました。