32の名著の著者の狙いがずばりと示されている本・・・【情熱的読書人間のないしょ話(984)】
初日の出をカメラに収めようと、暗いうちから、寒い中で1時間ほど頑張ったのですが、うまくいかず、残念! 因みに、本日の歩数は10,582でした。
閑話休題、『「100分de名著」名作セレクション』(NHK「100分de名著」制作班編、文藝春秋)では、32の名著が取り上げられています。
例えば、ニーチェの『ツァラトゥストラ』は、このように解説されています。「19世紀ドイツの著名な哲学者ニーチェが、40歳前後のころに書きあげた4部構成の書物です。主人公は30歳の時に山に入った隠者のツァラトゥストラ。10年ほどの間にあふれんばかりの知恵を蓄え、キリスト教に代わる新たな教えを人類に与えようと、山を下りて説教を始めます。人間は悩みにどう向き合うべきか、何を大切にして生きるべきかを問う内容で、伝統的な価値観に縛られず、自分自身で価値を創造していくことを求めています」。
「イタリアでルー・ザロメというロシア生まれの才女と出会い、恋に落ちます。結婚を2回申し込み、断られるのですが、これはニーチェにとってかけがえのない思い出となりました。そしてその翌年、わずか10日という期間で、『ツァラトゥストラ』の第1部を書き上げます。不遇を受けとめたうえで、力強く生きるにはどうすればいいのか、その答えをニーチェは必死になって探したのでしょう。こうして生まれた『ツァラトゥストラ』は、悩み多き人生への深い問いかけに満ちています」。『ツァラトゥストラ』は失恋の痛手から生まれたのです。そして、精神を集中すれば、大きな仕事ができることを示しています。
「ニーチェは、キリスト教信仰が崩壊した後に訪れるであろうニヒリズムの象徴として『末人』の姿を描いています。末人とは『憧れを持たず、安楽を第一とする人』で、無難に生きることだけを望む人たちです。こうした人間が増えることは、ニーチェとその化身であるツァラトゥストラにとっては、許しがたい事態です」。現代も、安楽・無難第一という人間の何と多いことでしょう。
「自分の運命について、完全に満足出来る人はいません。しかし不運を嘆きながら、嫌々行動していては、悦びを見いだすことが出来ません。つらい運命があっても、能動的に生きる。何が人生の悦びにあたるかは、自分で考えて探る。それがニーチェが『永劫回帰』に託したメッセージだろう」。名著を僅かなページで説明する書物は一向に珍しくないが、著者の狙いをこのようにずばりと言い切る本には滅多にお目にかかれません。