榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

ターナーは単なる風景画家ではなかった・・・【情熱的読書人間のないしょ話(985)】

【amazon 『もっと知りたいターナー』 カスタマーレビュー 2018年1月2日】 情熱的読書人間のないしょ話(985)

箱根駅伝は、母校の応援に力が籠もります。この分では、明日もはらはらさせられそうです。箱根駅伝の放送が終わったので、読書に集中します。

閑話休題、ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーは独特の色彩の風景画家と思い込んでいましたが、『もっと知りたいターナー――生涯と作品』(荒川裕子著、東京美術)を読んで、認識を改めました。

一番印象に残った作品は、「死者と死にかけた者を船外に投げ捨てる奴隷商人たち――迫りくる台風(奴隷船)」です。「血の赤で奴隷貿易を糾弾する」ために描かれたもので、「前景の波間には、奴隷たちの手足に食らいつく魚の群れが見える」ではありませんか。

「戦争、流刑者と岩傘貝」には、沈みゆく夕陽を背景に、セント・ヘレナ島に流された、かつての皇帝ナポレオンの孤独な姿が描かれています。「血の色を連想させる赤を主調とした画面は、ナポレオンがヨーロッパ中で巻き起こした戦乱を暗示している」。