男を磨くヒントがぎっしりと詰まっている一冊・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2020)】
見たことのない綺麗なチョウがあそこに、と撮影助手(女房)が指さす先にウラギンシジミの雄(写真1)が。銀白色の表翅を見せて飛び去るウラギンシジミを眺めていると、後ろから助手が、地味だけど見たことのないチョウがいるわよ、と囁きます。何と、この辺りでは滅多に見ることのできないオオウラギンスジヒョウモンの雌(チョウに造詣の深い岩瀬隆志さんの教示による。写真2~6)ではありませんか。ナガサキアゲハの雌(写真7、8)を見つけたのは、私です。助手がオナガの鳴き声に気づきました。オナガの若鳥(写真9)をカメラに収めることができました。今日は、助手様様です。ナンキンハゼ(写真10~12)、モミジバフウ(写真13、14)が紅葉、カツラ(写真15、16)が黄葉しています。因みに、本日の歩数は13,239でした。
閑話休題、エッセイ集『再び男たちへ――フツウであることに満足できなくなった男のための63章』(塩野七生著、文春文庫)では、塩野七生の自家薬籠中のマキアヴェッリやミケランジェロがちょくちょく顔を出します。
「マキアヴェッリは、愛されることと憎まれることと軽蔑されることのちがいを、次のように述べている。誰でも愛されたいと願う。だが、めざましい成果をあげた場合、愛されるよりも低まれるほうが多くなる。なぜなら、人間は嫉妬するのが普通だからで、憎まれることは能力を認められたことの証明でもあるのだ。しかし、軽蔑は同列にはあつかえない。軽蔑は、能力を認めたうえでの評価ではない。能力を認めないことによって生まれる評価である。それゆえに、憎まれることはあっても軽蔑されることだけは絶対に避けねばならない。必ずや実害につながる」。
「『軍の指揮官にとって最も重要な資質は何かと問われれば、想像力であると答えよう』とマキアヴェッリは言っている。誰の眼にも動かしがたい劣勢と映る戦況を、ほんの小さなことを変えるだけで逆転させ、戦況を有利に導いていくのが最上の指揮官であり、そのほんの小さなことに気づき、それを活用できるのは、想像力によるしかないということである」。
「24歳のミケランジェロが、今なおヴァチカンの至宝とされている『ピエタ』(キリスト母子像)を制作した当時の話である。依頼主の枢機卿は出来には満足したのだが、報酬の額を言われて眼をむいた。150ドュカートだったからだ。小人数の家族の家賃なしの1年間の最低生活費が15ドュカート程度であった時代、150ドュカートは非常識な額ではない。それでも当時では一級芸術家の値である。その頃のミケランジェロは、フィレンツェでは名は知られていたがローマでは無名といってよい。その無名の若造が、一級芸術家と同じ報酬を要求してきたから枢機卿はあきれ、思わず高すぎると抗議した。ところが、若きミケランジェロは恐縮するどころか、平然と言い返したのである。『トクをするのはあなたです』。ひたすらカネを使う(芸術にたずさわる)側も、ホンモノならば絶対にヤワではないことを実証している」。
本書には、男を磨くヒントがぎっしりと詰まっています。