子育て中の巣箱に侵入してきたヘビに対し、母モモンガが取った意外な行動・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1509)】
ギョギョシ、ギョギョシと賑やかに囀るオオヨシキリの撮影に、遂に成功しました。ここ数年、失敗続きだったのです。交尾中のシオカラトンポ、シオカラトンポの雄、雌(ムギワラトンボとも呼ばれる)、オオシオカラトンボの雄、コシアキトンボ、ウチワヤンマをカメラに収めました。因みに、本日の歩数は10,628でした。
閑話休題、『先生、アオダイショウがモモンガ家族に迫っています!――[鳥取環境大学]の森の人間動物行動学』(小林朋道著、築地書館)の「巣内に侵入したヘビに対するモモンガ母子の行動――●×△しないのかよ! でもそれが生物の懸命な生きざまなのだろう」の章では、動物行動学の一端に言及されています。
「まだ目も開いていない子(ニホン)モモンガがすぐそばにいるところ(巣箱)へヘビ(アオダイショウ)がやって来たら、母(モモンガ)はどんなにか激しくヘビを威嚇するだろう、・・・と思った。もちろん、母自身もヘビからの攻撃で命を落とす(捕食される)可能性があるから文字どおり命がけだ」。
ところが、「結果は意外だった。私がヘビの頭を巣箱の出入り口のすぐ前まで近づけたとき(つまり、厳密にはまだヘビは巣箱のなかに入っていないとき)、母親は顔を上げ、出入り口のほうを向き、その鼻がピクッと動いたように見えた次の瞬間、ものすごいスピードで、出入り口とは反対側の巣箱の角に移動した。そして背中を上にして丸まり、いっさい、動かなくなったのだ。それからヘビの頭部はだんだんと巣箱の内部へと入れられていったのだが、母モモンガはじっとしたままだった」。
「えっ! 何だよ。なんか、子モモンガを守るような行為はないんかよ!・・・それが私の率直な思いだった」。
「ヒトという動物は、基本的には、自分の遺伝子が入った個体を増やすことを、たとえば、一生の間で少ない数しか産めない子ども一個体一個体に大きな援助(命をかけて守ろうとする行為も含まれる)を与えて達成しようとし、援助などの遂行に『喜び』とか『子どもを守らなければ』という強い感情をわき立たせて、行為を促進する。あと押しする。別なやり方、たとえば、一生の間にたくさんの子どもを産める性質に舵を取ったニホンモモンガは、子ども一個体一個体にかける援助を、ヒトの場合ほどには大きくせず、自分も命を落とす可能性がある場面では逃避して生きのび、その後の生活の中でたくさん子どもを残すことに労力を使う。したがって、彼らが子どもの世話をしたり子どもを守ったりするときに感じる心理は、ヒトの場合の『喜び』とか『子どもを守らなければ』という感情とは質・量において異なっていると考えられる。でも結果的には、ヒトという動物でも、ニホンモモンガという動物でも、それぞれのやり方で自分の遺伝子が入った個体を増やすことになるのだ。感情(心理)は、それぞれ独自の生活環境のなかで、『自分と同じ遺伝子をもった個体をより多く残す』という結果を出しやすい行為の発現をあと押しする機能をもっている、と現代の動物行動学は考えるのだ」。
「母モモンガの行動に対して、われわれが(無意識のうちに擬人化思考などを行なって)『薄情だな』という心理を感じることは避けられないだろう。でも、他方で、母モモンガの行動を、進化の過程で、われわれとは異なる生き方を発達させて生き抜いてきた生物種の一特性として、あるがままに、尊重することも必要ではないだろうか」。