古代マヤ文明の王の頭頂部が極端に細長く尖っているのはなぜか・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1877)】
ニホンカナヘビ、イチモンジチョウ、コジャノメ、サトキマダラヒカゲ、ダイミョウセセリ、クマバチ(キムネクマバチ)、コアオハナムグリ、ナミテントウ、マルカメムシ、ネコハエトリをカメラに収めました。コアオハナムグリが撮影助手(女房)の服に飛び移り、排泄物で汚してしまいました。
閑話休題、『図説 マヤ文明』(嘉幡茂著、河出書房新社・ふくろうの本)は、図と説明によって、マヤ文明の全体像を甦らせることに成功しています。
「マヤ文明の盛衰を理解するには、この文明圏の枠踏みを超える、より広い地理的範囲の設定が必要になる。それは『メソアメリカ』地域または文明という用語である。この用語は、1943年にポール・キルヒホフという人類学者によって提唱された。・・・キルヒホフによる『メソアメリカ』の定義は、生活様式とその地理的な広がりを指している。その結果、メソアメリカの地理的範囲は、北部を除いたメキシコ、グアテマラ、ベリーズ、エル・サルバドル、そして。ニカラグアとホンジュラスの西武、さらにコスタ・リカのニコヤ半島までであるとの認識が、研究者の間で共有されるようになっていった。したがってマヤ文明は、メソアメリカ文明圏の中では南東部に位置するといえる。・・・(メソアメリカ全体が統一されることはなく、それぞれの地域で独自の文化を生み出した古代社会は)情報や物資を相互交換するためのネットワーク・システムを強固に築き上げた。その代表例がマヤ文明である」。
とりわけ感銘を受けたのは、本書がマヤ文明の精神面にも深く切り込んでいることです。
著者が魅了されたという古代マヤ文明の名君、パレンケ王朝の第14代王キニチ・アーカル・モ・ナーブⅢ世(在位:後721年~不明)の写真が掲載されています。「確かに、古代マヤ文明の諸都市は、密林の中や背後に海が広がる場所にあり神秘的である。そして、遺物の造形美が極めて高いため、私たちを魅了する。しかし、魅了の源泉は彼らの思想にある。私たちと彼らの世界観の違いが、より一層、私たちを彼らの世界のとりこにする。この王の肖像には一つ不思議な点がある。王の頭部が極乱に細いことである。この頭蓋変形は、人はトウモロコシから誕生したと考えた古代人の思想と密接な関係があると解釈されている。人体の重要な部位をトウモロコシの形に似せることによって、活力を得ることができると信じたためであると。しかし、それだけではない。他にも重要な秘密が隠されている」。
「骨が柔らかい乳幼児期に、額と後頭部を板などではさみ、形を細長く『矯正』する風習があった。・・・マヤの王の額と後頭部は明らかに内部に窪んでおり、頭頂骨(頭の天辺)はかなり尖っている。・・・恐らく古代マヤ人は、壁画などに描かれる理想的な頭頂部を獲得するために、頭蓋骨への変形をより強化する努力をしていたに違いない。しかし、過度の頭蓋への圧力は、重大な障害を引き起こす可能性がある。顔面変形や歯列異常といった症状だけでなく、脳の損傷が原因で発達遅滞も引き起こす」。
「もし、トウモロコシの子実の形により近づけるという解釈が正しいのであれば、額と後頭部は湾曲せず、穏やかに先が尖る形に近いはずである。これは、トウモロコシの子実に似せることで得られる力の獲得の他に、別の重要な思想が関与しているからである。マヤ人のみならずメソアメリカの人々は、肉体を霊魂の器として捉えていた。特に後頭部の存在は、頭と上半身を行き来する霊魂の循環を阻害する働きがあると信じられていた。つまり、後頭部は邪魔な部位だったのである。これを取り除くために、彼らは『美』を追求していたのである」。その美に対する執念や、恐るべし。