榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

潔い人、88歳の八千草薫のエッセイ集・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1924)】

【amazon 『まあまあふうふう。』 カスタマーレビュー 2020年7月21日】 情熱的読書人間のないしょ話(1924)

コシアキトンボの雄、クロアゲハの雄をカメラに収めました。ペンタス・ランケオラータ(クササンタンカ)が桃色、赤色の花を咲かせています。オニユリにムカゴと呼ばれる黒い珠芽が付いています。よく似ているコオニユリにはムカゴが付きません。ニイニイゼミ、アブラゼミ、ミンミンゼミが元気に鳴いています。セミの抜け殻を見つけました。

閑話休題、エッセイ集『まあまあふうふう。』(八千草薫著、主婦と生活社)を読んで、八千草薫というのは、本人が言っているように「潔い」人だなと感じました。

19歳年上の既婚者・谷口千吉と不倫関係になり、その後、26歳で結婚した時も、2018年に膵がんと告知された時も、自らの死期が迫ったと悟った時も、小気味よいほど「潔い」のです。

「こう見えて、私はわりあいに大胆なところがあるのですね。自分で言うのもなんですが、潔いのです。・・・そうやってずっとウンウン考えていると、『もうここまで十分考えたんだから・・・』と思えるタイミングがあるんですね。それまで色々考えたり悩んだりしていても、私はそこでパッとやめます。『・・・ま、いいか』。どれだけ、こだわっていたものだとしても、諦めます。『えい、これでおしまい!』。そうやって前に進みます」。

「映画監督だった主人の谷口千吉は明治の終わりの生まれ。その主人とは、私が26歳の時に結婚して50年――95歳で亡くなるまで一緒でした。もう本当に自由に生きていた人でした。話が上手で話好き。そして山登りや自然も好き。『日本男児』というよりは、どこか欧米の方のようなおおらかさと、何よりユーモアがある人でした」。

「買いものをするのなら、高いものではなくて、自分の心がウキウキするようなものに出会いたいのです」。

「『一日1万歩、歩くといい』と聞いて、しばらくは1万を目標に歩いていたのですが、1万歩だと私にはちょっと多いの。歩き過ぎなんです。そうなるとせっかく歩いているのに、だんだん疲れてきて嫌になってしまうので、今は5000歩。それくらいが私にはちょうどいいんです。近くにふたつある公園までの道を、日替わりで飽きないように歩きながら色々なことを考えます。・・・そうやって歩きながら、いつもと違う道を通ってみるだけでも新しい発見があったり、季節によって近所のお庭の花や公園の木々の様子も変わっていったり、楽しさがあるんです。・・・主人がいた頃は、いつもいっしょに近所を散歩していました」。私も毎日10000歩を目標にしているので、この感じはよく分かります。

「私がここまでどうにか女優を続けてこられた原動力のひとつは、人への興味、好奇心があったからです」。

「膵臓がんという診断でした。先生からそうお話を伺った時、私は、不思議とショックを受けたりということがありませんでした。どんな感情だったのか表現するのが難しいのですが、ひと言で表すのなら、『おぉ、来たか・・・』。驚きよりも、『あ、とうとう来たんだ』という感覚でした。・・・『悪いものができたのは、まぁしょうがない』。『悪いものがあるのなら、(手術で)取ればいいか』」。

「たった1年で肝臓へ転移したということも、私がもっと若かったら、もっとショックだったかもしれませんし、考えることもたくさんあっただろうと思います。『もっともっと、何がやっていきたいのに・・・!』。『もっともっと、自分の人生を歩いていきたいのに・・・!』。『この辺で終わらせられてしまうのか・・・!』。そんなふうには、あまり考え込まずに済んでいるのは、私が、もうそんなにこの先長く生きる年齢でもない、ということが大きいと思います。『あぁ・・・まぁ、しょうがないな』。『病気は病気で、まぁ精一杯生きるしかないなぁ』。それは我慢して、そういう気持ちになっているのではなくて。素直に、そういう気持ちなんですね」。

「歳をとったり病気になったりということは、もちろん深刻なんです。深刻なのですが、それはやっぱり仕方のないこと。いつかこの世からいなくなるのは、人だけでなくて、動物も植物もみんな平等ですから。「どうしようもないことは、考えなくていい』」。

「後悔があったとしても、反省があったとしても、自分が納得するまで、『今』から逃げないことが大事だと、私は思うのです。『もう、ここまで考え抜いて、ここまでやったのだから』。『どうなっても、まぁいいか・・・』。そう思えるまで今をとことんやるから、納得してまた前に進めます。そうやって色々考えても、結局、思い通りにいかないものですけれど、それが生きるということなんじゃないかな。だからこそ、今――その日その日、一日一日、瞬間瞬間を大事に過ごしたいな、と思うんです」。この言葉に忠実に彼女が人生を全うしたことは、周知のとおりです。

本当に潔い、爽やかな人ですね。