短時間で読めて、しかも内容がきちんとわかる文章を書く技術、パラグラフ・ライティングを学ぼう・・・【MRのための読書論(176)】
更科功
更科功の本――『絶滅の人類史――なぜ「私たち」が生き延びたのか』、『宇宙からいかにヒトは生まれたか――偶然と必然の138億年史』、『進化論はいかに進化したか』、『残酷な進化論――なぜ私たちは「不完全」なのか』――は、いずれも理解し易い文章で綴られているので、短時間で読了することができた。
この更科が書いた文章術の本が『理系の文章術――今日から役立つ科学ライティング入門』(更科功著、講談社・ブルーバックス)である。「本書は『科学に関する文章の書き方(科学ライティング)』の本である(ただし、科学にかぎらず他の分野でも、論理的な文章を書くときには役に立つだろう)」と述べているが、そのとおりだ。
読み手
更科のアドヴァイスは多岐に亘り、かつ専門的なことにも及んでいるので、更科の叱責を覚悟して、私の独断で8つのルールに整理してみた。
●ルール1=読み手が誰かを考える。
●ルール2=読み手の目的を考える。
●ルール3=読み手の立場になって考える。
文章
●ルール4=文は短くする。
●ルール5=1つの文で1つの主張をする。
●ルール6=主語が明記しにくいときは、受動態を使う。
パラグラフ・ライティング
「パラグラフ・ライティング」とは、論理的に物事を伝えるために役立つ文章術のことだが、段落を積み重ねていく点に特徴がある。
更科は、こう説明している。「読みたくない文章をなるべく短い時間で読めて、しかも内容がきちんとわかる文章を書く技術」。「きちんとした文章が書けないアメリカの大学生などのために、簡単に論理的な文章を書けるように改良された技術」。「段落を積み重ねながら書いていく」。「わかりやすく、斜め読みができて、論理的な文章を書くための方法」。
●ルール7=1つのパラグラフでは、1つのトピックだけを述べる。
●ルール8=キーセンテンスはパラブラフの最初に置く。
広く認められている文章の表記法のルールが5つ挙げられているが、次の2つは、私のルールと異なっているので、今後、検討したいと考えている。
「苗字や名前が複数の単語で表されるときは、それらの単語の間につなぎ(=)を入れる。[例]サイモン・コンウェイ=モリス。『サイモン』が名前で『コンウェイ=もりス』が苗字」。
「言葉を列挙するときには、区切りに読点を入れる。一方、鉤括弧でくくられた言葉を列挙するときには、区切りに読点を入れない。[例]チンパンジーよりヒトに近縁な生物を、人類、ヒト族、ホミニン、などと呼ぶ。チンパンジーよりヒトに近縁な生物を、『人類』『ヒト族』『ホミニン』などと呼ぶ」。
演習
本書のアドヴァイスは、徹底的かつ具体的である。
随所に問題と解答例、改善例が示されており、この演習を実行することで、効率的にコツが学べる仕掛けになっている。
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