経営学、心理学、人間行動学の常識とは正反対の企業カルチャーを持つネットフリックスが急成長を遂げたのは、なぜか・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2077)】
ハクセキレイをカメラに収めました。ドウダンツツジ(写真2、3)が紅葉しています。マンリョウ(写真4)、センリョウ(写真5)、キノミセンリョウ(写真6)が実を付けています。クスノキ(写真7)の枝が目を惹きます。
閑話休題、『NO RULES――世界一「自由」な会社、NETFLIX』(リード・ヘイスティングス、エリン・メイヤー著、日経BP、日本経済新聞出版本部)では、ネットフリックスの急成長の秘密が明かされています。
ネットフリックスは郵送DVDレンタル会社として出発し、世界190カ国で1億6700万人の会員を擁するインターネット・ストリーミングサービスに転換し、さらには世界中で独自のテレビ番組や映画を制作するグローバル企業に進化しました。
自らの業界環境が変化すると経営が傾く企業が多い中で、ネットフリックスが15年の間に何回もの脱皮を遂げ、世界有数のエンタテインメント企業に変身できたのは、なぜでしょうか。
「ネットフリックスは何年にもわたって試行錯誤を繰り返し、徐々に進化していき、ようやく正しいアプローチを探り当てた。社員に守るべきプロセスを与えれば、自らの判断力を働かせて考える機会を奪ってしまう。そうではなく自由を与えれば、質の高い判断ができるようになり、説明責任を果たすようになる。それによって社員の幸福度や意欲は高まり。会社も機敏になる。ただし社員の自由度をそこまで高くするためには、まず土台としてふたつの要素を強化しなければならない」。強化すべき2つの要素とは、「能力密度を高める」と「率直さを高める」です。一方、出張規程、経費規程、休暇規程などのコントロールは減らすべきというのです。そして、管理職には「コントロールではなくコンテキストによるリーダーシップ」という原則を教え、社員には「上司を喜ばせようとするな」といった指針を与えるというものです。
具体的なステップは3段階から成っています。
第1段階――。
●有能な人材だけを集めて、能力密度を高める。
●フィードバックを促し、率直さを高める。
●休暇、出張、支出に関する規程など、コントロールを撤廃していく。
第2段階――。
●個人における最高水準の報酬を払い、能力密度を一段と高める。
●組織の透明性を強化して、率直さをさらに高める。
●意思決定の承認を不要にするなど、もっと多くのコントロールを廃止していく。
壇3段階――。
●キーパーテストを実施して、能力密度を最大限高める。
●フィードバック・サイクルを生み出し、率直さを最大限高める。
●コンテキストによるマネジメントで、コントロールをほぼ全廃する。
キーパーテストとは――。
「ネットフリックスはすべてのマネージャーに対し、定期的に部下を評価し、それぞれのポストに最適の人材であることを確認するよう求めている。そしてマネージャーが正しい判断をできるように、『キーパーテスト』という手法を教えている。<チームのメンバーが明日退社すると言ってきたら、あなたは慰留するだろうか。それとも少しほっとした気分で退社を受け入れるだろうか。後者ならば、いますぐ退職金を与え、本気で慰留するようなスタープレーヤーを探そう>。私たちは自分自身を含めて、キーパーテストを全員に当てはめる」。
「キーパーテストを実施すれば、職場の能力密度は高まるだろう。さらにライブで率直な360度評価を実施するようになれば、職場内に率直な雰囲気が醸成されるのに加えて、社員がお互いに率直かつ誠実にフィードバックを与えあう仕組みが確保されたことになる。ここまで社員の能力や率直さが高まったら、次は組織のリーダーたちが抱え込んできたさまざまなコントロールを手放す番だ」。
コンテキストによるリーダーシップとは――。
「コントロールによるリーダーシップとは、たいていの人になじみのあるものだ。チームが取り組むこと、行動、意思決定を上司が承認し、指示を出す。上司が部下の判断を直接監督し、コントロールすることもある。何をすべきか指示し、頻繁に確認し、自分の望みどおりにできていない仕事はやり直しをさせる。あるいは直接監督する代わりに、コントロール・プロセスを設定して部下に多少の権限を与えることもある。多くのリーダーは、タスクへの取り組み方について部下に一定の自由を与えつつ、何をいつまでにやるかについては上司が管理できるようなコントロール・プロセスを採用している。たとえば目標管理制度(MBO)がそうだ。上司が部下とともにKPIを設定し、定期的に進捗を確認し、期限と予算を守りつつ、あらかじめ設定した目標を達成したか否かで最終評価を決定する仕組みだ」。
「一方。コンテキストによるリーダーシップはもっと難しいが、部下の自由度は大幅に増える。上司はできるかぎり多くの情報をチームと共有し、監督やプロセスによるコントロールがなくてもメンバーが優れた意思決定をして、成果を挙げられるように後押しする。それによって部下の意思決定能力が鍛えられ、将来的に自分の力で優れた判断を下せるようになるというメリットがある」。
目覚ましい実績という裏付けがあるだけに、本書の主張は強い説得力があります。