竹中平蔵の正体・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2237)】
ノアザミで吸蜜するキアゲハ(写真1~3)、獲物を銜えたハクセキレイ(写真4~6)をカメラに収めました。我が家の庭では、アジサイ(写真7~9)が咲いています。
閑話休題、「読書クラブ 本好きですか?」の読書仲間・大原裕氏から薦められた『竹中平蔵 市場と権力――「改革」に憑かれた経済学者の肖像』(佐々木実著、講談社文庫)を手にしました。
「企業活動の自由を全面的に解き放とうとする新自由主義の思想を極限にまで押し広げ、社会の全領域を市場化しようとする欲望を『市場原理主義』と呼ぶなら、小泉政権はたしかに市場原理主義的な性格を強く帯びていた。そうした『構造改革』のイデオローグが、竹中平蔵という経済学者だったのである。彼は閣僚として、金融改革や郵政民営化を手がけた実践者でもあった」。
「たとえば、製造業における派遣労働の解禁などである。『構造改革』は企業の利益を押し上げる一方、労働者の賃金を引き下げる成果をあげた。『企業活動の自由』をなにより優先する新自由主義的政策の必然的帰結だった。利益配分のあり方を根本から変革することにこそ、『構造改革』の意義がある。地方への財政支援を大胆にカットする緊縮財政を小泉政権が強行したのもそのためである。結果として、正規社員と非正規社員、大都市と地方など、『階層化』と呼んでいいほどの大きな格差が生まれることになった。階層化を意図する政策だとはじめから理解されていれば、小泉政権への高支持率はありえなかったはずである」。
「格差社会批判の矢面に立たされしばらく雌伏の時を過ごさざるをえなかった竹中は、民主党政権の迷走が生んだ安倍政権のもと、産業競争力会議の中枢メンバーとして再び表舞台に立った。・・・竹中は、産業競争力会議には『慶應義塾大学総合政策学部教授』という肩書で参加している。役所の分類でいうと、学識経験者である。だが、彼には別の顔がある。人材派遣業界の大手企業、パソナグループの取締役会長をつとめている。労働市場を営業の場とする企業グループの経営者でもあるのだ。不思議なことに竹中の話は、日本社会の改革を語りながら、パソナの市場開拓戦略にもなっている。・・・パソナグループは労働市場の規制緩和の進展とともに、いいかえれば、非正規雇用者の急増を背景に業容を拡大してきた企業だ。・・・彼が語る『構造改革』においては、経済学者の立場、企業経営者としての立場、両者の立場が混然一体として齟齬なく同居している。それはまるで、ホモ・エコノミカスたちによる、ホモ・エコノミカスのための革命である」。
読み進める中、おや、と目を止めた箇所がある。「郵政民営化で竹中を手伝った髙橋洋一」、「竹中側近として、経済産業省出身の岸博幸、財務省出身の髙橋洋一というキャリア官僚が活躍した」とあるではありませんか。この髙橋は、2021年5月9日、ツイッターに、新型コロナウイルスの新規感染者数について「日本はこの程度の『さざ波』。これで五輪中止とかいうと笑笑」と、そして、5月21日には、「日本の緊急事態宣言といっても、欧米から見れば、戒厳令でもなく『屁みたいな』ものではないのかな」と投稿した人物です。
一時的だったにしても、竹中を高く評価していた自分を、深く恥じ入っています。