榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

人妻であったが、短歌の師・川田順と恋に落ち、再婚した鈴鹿俊子の短歌集・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2357)】

【読書クラブ 本好きですか? 2021年9月30日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2357)

ヤマトシジミ(写真1)、ヒカゲチョウ(写真2~5)、群れているムクドリ(写真6、7)をカメラに収めました。飼い主によれば、イングリッシュ・セター(写真8、9)という犬種で、5歳の雌とのこと。年配の男性が、自分で作った竹蜻蛉を30mほどの上空まで飛ばしています。

閑話休題、3人の子を儲けた人妻であったが、27歳年上の短歌の師・川田順と恋に落ち、再婚した鈴鹿俊子の『蟲――鈴鹿俊子歌集』(鈴鹿俊子著、白玉書房)を読みたいと思ったが、国立国会図書館にしか所蔵されていないことが判明。国立国会図書館と結ばれている柏市立図書館本館のパソコン画面で閲覧することができました。

昭和24年晩春から31年早春までの7年間の作から選ばれた454首が収録されています。

とりわけ私の心に沁みたのは、この22首です。
●銭湯にてめくらのをんな吾よりもたんねんにそのからだを洗ふ
●羽織ぬぎてなほ汗ばめる昼すぎに今年はじめての蝉の声すも
●蚊取線香の一点の赤き光さへ君とゐる夜の心に沁みぬ
●つれてゐし牝犬を見て息あらく牡犬の啼けば切なかりけれ
●くりやより出で来て吾に道を教ふをんな包丁を持ちしままにて
●ソローの森の生活といふ本が君の机に朝より置かる
●ころもの袖たぐりて坐る修行僧らいづれも善人らしき顔せり
●むなしくて一日過ぎむとする夕べ沙庭低く蚊柱の立つ
●三和土(たたき)洗ふ魚屋の小僧裸なり冬ちかき宵の街を通れば
●雪をんな昨夜(よべ)来て窓べに佇ちにけむ白き雪の上大きく窪む
●雪溶けの泥濘になづむ坂の道クララ修道院の昼の鐘鳴り
●修道院に入る希望終に捨てし少女白き手してコーヒーをのむ
●匂ふばかり笑みたまへども黒リボン掛けし写真は対ふに耐へぬ
●ゆくりなく友に逢ひしが憎みとも妬みとも見ゆるまなざしにあふ
●前にゐるは女子夜学生らし膝の上のノートにひたむきの眼をそそぎゐつ
●二日ばかり家を離るればみとせ前の君と今のきみと重なり思ふ
●女子学生も芝生に憩ひゐて卑下せざり学を恋ひつつ吾はさびしき
●黒衣着て場内の観衆にまじりゐるフランス修道僧の清き横顔
●理想家にて事業に失敗せし人の侘居を訪へば草抜きて居る
●藤村の「新生」の結末は納得出来ぬと女のみにてひそひそ話す
●高原に黒き外套の君と佇ちてうつつなるいま恋しみやまず
●腹の立つこと多き世に生き心のままを吐き得ぬことも君によりて知る