心優しい少女フランシスと、猿を連れた街のオルガン弾きの物語・・・【山椒読書論(632)】
【読書クラブ 本好きですか? 2021年12月16日号】
山椒読書論(632)
絵本『ゆきのまちかどに』(ケイト・ディカミロ作、バグラム・イバトーリーン絵、もりやまみやこ訳、ポプラ社)は、心優しい少女フランシスと、猿を連れた街のオルガン弾きの物語です。
「クリスマスがちがづいた あるゆうぐれ、にぎやかなまちかどに、さるをつれた オルガンひきが やってきました。・・・フランシスは アパートのへやのまどから、さるとオルガンひきをながめました。・・・ときおり、ほんのいっときだけ とおりのざわめきが とだえることがありました。すると、てまわしオルガンのかなでるおとが、ひとごみをとおりぬけ、まどをつたって、フランシスのみみもとまでとどきました。そのねいろは ものがなしく、まるで ゆめのなかでなっているような、とおくからのひびきにきこえました」。
「『あのひとたち、よるは どこかへかえるの?』。フランシスが おかあさんにききました」。
「そのときです。オルガンひきがかおをあげ、ぼうしをとって、フランシスにあいさつをしました」。
「『あのひとたち、みちばたでねているのよ。ゆきがふっているのに』。つぎのひのあさ、フランシスは おかあさんにいいました」。
「『きてね』。ふりかえりながら フランシスはいいました。『このさきの きょうかいよ。ふたりとも (わたしがでるクリスマスのおしばいを)みにきてね』。オルガンひきは フランシスにほほえみかけました。でも そのめは、かなしそうでした」。
写実的でありながら、幻想的な雰囲気を漂わせる絵が印象に残る作品です。