50歳間近の剛腕女性社長と、初老の売れないフリーランス・ライターとが出会ったら・・・【山椒読書論(677)】
【読書クラブ 本好きですか? 2022年3月8日号】
山椒読書論(677)
コミックス『黄昏流星群(65)―― 一番星ハンバーガー』(弘兼憲史著、小学館)に収められている「一番星ハンバーガー」は、50歳間近の剛腕女性社長と、初老の売れないフリーランス・ライターとが出会う物語である。
スマホもカードも財布も忘れてきたことに気づいた時国直子が、バーガー店に入って困っている時、助け船を出してくれたのが加茂茂樹だった。
「セックスがこんなにも気持ちがいいなんて、今まで知らなかった。この初老の男は、官能小説を書くだけあって、性技には長けているのだろう・・・。私は、このまま死んでもいいと思うくらい、のぼりつめた。・・・もう私は、加茂茂樹にメロメロ。それから私達は週に一度のペースで逢うようになった。公園を散歩して、映画を観て、レストランで食事をして・・・彼の家で愛し合う、というルーティンでデートを繰り返した。彼は私のことを、会社にパートで勤めながら、女の子を育てている貧しいシングルマザーと思い込んでいる」。
ところが、ある日、直子が専用運転手付きのメルセデスベンツから下りてくるところを、茂樹に見られてしまう。それからは、直子が何度ラインにメッセージを入れても反応なし。
漸く茂樹に会えた時の、直子の言葉。「私は、社長業をしている間は、ずっとイライラした人生を送っていたように思います。でも、加茂さんに出会って変わりました。あなたの前にいると、優しくなる自分を発見します。それがとても不思議です」。
本当の愛とは何かを考えさせられる、心温まる作品だ。