榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

生徒たちに人気のある若く美人の小学校の女性教師を殴殺したのは誰か・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2635)】

【読書クラブ 本好きですか? 2022年7月4日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2635)

ルピナス(写真1)が咲いています。オオシオカラトンボの雄(写真2、3)、雌(写真4~6)をカメラに収めました。

閑話休題、『プリズム』(貫井徳郎著、創元推理文庫)には、3度も驚かされました。

1番目は、生徒たちに人気のある若く美人の小学校の女性教師がアンティーク時計で殴殺された事件について、「Scene1 虚飾の仮面」では被害者が受け持っていた5年生の男子生徒が、「Scene2 仮面の裏側」では被害者の同僚女性教師が、「Scene3 裏側の感情」では被害者の元恋人の眼科医が、「Scene4 感情の虚飾」では被害者の不倫相手の外科医が、不審な死の真相を追う探偵役を務めるという形式のユニークさ。

2番目は、Sceneが進むにつれて、被害者の女性教師の思いもかけない実態が次々と明らかにされていくというストーリー展開の巧みさ。

3番目は、Scene1、2、3で展開された推理が、Scene4に至って悉く覆され、意外な犯人が浮かび上がってくるというミステリとしての完成度の高さ。

このような極上の作品を捻り出す貫井徳郎という稀有の推理作家を、これまで知らずに過ごしてきたとは、何という迂闊者なのだと反省頻りの私。