榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

ヨハネス・フェルメールの作品を、描かれた「眼」から読み解こうという試み・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2887)】

【読書クラブ 本好きですか? 2023年3月13日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2887)

一昨日、千葉・安孫子の手賀沼を訪れた時の写真です。オオジュリン(写真1)、モズの雄(写真2、3)、コブハクチョウ(写真4)をカメラに収めました。コブシ(写真5~8)、セイヨウアブラナ(ナノハナ。写真9)が咲いています。

閑話休題、『フェルメールの眼――赤瀬川原平が読み解く全作品(新装版)』(ヨハネス・フェルメール画、赤瀬川原平著、講談社)は、描かれた「眼」からヨハネス・フェルメールの作品を読み解こうという試みです。

●赤い帽子の娘
「何とも大胆な赤い横長の帽子。そして濡れた小さな赤い唇。その二つを結ぶ横長の逆三角形が、薄暗い画面の中でゆっくり右に傾いている。何ごともない穏やかな絵なのに、画家の描く冷徹な空気にひやりとする」。フェルメール好きな私だが、この絵は知りませんでした。ほんの少し開いた唇が何とも蠱惑的です。

●兵士と笑う娘
「(フェルメールの室内画の中で)この絵はいちばん明るく、地図がはっきり見える。女性の顔もいちばん明るい。綺麗な笑顔だ。唇の両端がふわりと上がり、白い歯まで見えて、明らかに笑顔である。じつは絵の中に笑顔が描かれること自体が珍しいのだ」。見ているほうも思わず微笑んでしまう素敵な笑顔です。

●牛乳を注ぐ女
「流れ落ちる牛乳を見つめる女の眼差しには、牛乳を見守る温かさがある。でもそんな微細な温かさを適確に描き出してしまうフェルメールの透明な力に、いわゆる人間をちょっと超えた、神の位置エネルギーのようなものを感じてしまうのである」。フェルメール作品の中で私の一番好きな絵なので、オランダのアムステルダム国立美術館を訪れた際に求めた原寸大の複製画を額に入れて書斎に掲げています。この女性を身近に感じると、不思議に心が落ち着くのです。