茨城県の歴史を知るのに最適な一冊・・・【山椒読書論(786)】
【読書クラブ 本好きですか? 2023年5月5日号】
山椒読書論(786)
『いばらき歴史紀行』(井坂幸雄文、奥川洋治絵、茨城新聞社)で、個人的に興味深いのは、●筑波山――茨城を象徴する歴史の山、●真壁の町並み――繁栄の歩み記す多くの建造物、●渡良瀬遊水地――鉱毒被害脱して自然の宝庫に、この3つである。
●筑波山
「豊作への願いと感謝、そして男女の求愛の場として、日本各地で行われていた歌垣(うたがき)の地としても有名だ。春と秋に男女が集い、歌を掛け合い、宴や恋愛を楽しむ光景は『常陸国風土記』や『万葉集』にも描かれている。筑波山は佐賀県の杵島山、大阪府の歌垣山と共に日本三大歌垣の地でもあった」。子供の頃から、父の故郷に聳える筑波山に親しみを感じてきたが、歌垣の地ということは知らなかった。
●真壁
「真壁は平安時代末期から真壁氏が治め、現在、国指定史跡となっている真壁城の西側に町が形成されていった。江戸時代に入ると、浅野氏がこの地を治め、城下町の整備を進めた。現在の町割りはこの時期に形成されたものを受け継いでおり、碁盤目状の通りや道幅も当時とほぼ同じである。浅野氏はその後笠間に移封となり、真壁藩は廃止、笠間藩は陣屋を置いて真壁を統治した」。私の子供時代は夏休みや冬休みに、父が育った真壁を訪れ、自然を満喫するのが常だった。榎戸氏は真壁氏の重臣で、郊外に塙世城を構えていた(現在も城跡に榎戸本家が住んでいる)。
●渡良瀬遊水地
「洪水と公害と廃村という重い歴史の中で生まれた渡良瀬遊水地。その後も遊水地区域の買収や整備工事、河川改修が進められた。現在は多くの絶滅危惧種を含む植物約1000種、昆虫1700種、鳥類260種が生息する自然の宝庫となっており、2012年にはラムサール条約湿地に登録されている」。近い将来、野鳥観察で訪れたいと考えている。