榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

大谷翔平が「イライラしたら自分の負け」と自分を律していることを想起させる本・・・【MRのための読書論(211)】

【ミクスOnline 2023年7月21日号】 MRのための読書論(211)

嫌なこと

誰でも仕事をしていれば、大なり小なり嫌なことにぶつかるものだ。嫌なことに遭遇したとき、どう対応するかで、仕事ができる人と、できない人の差が生まれてくると言っても過言ではないだろう。仕事ができる人は、嫌なことは新しい情報、宝の山だと思う。一方、仕事ができない人は、嫌なことで落ち込み、ストレスを溜めてしまう。すなわち、捉え方が180度違うのである。

嫌なことノート

書くだけで人生が変わる 嫌なことノート』(嫌なことノート普及委員会著、アスコム)は、嫌なこととうまく付き合うための「嫌なことノート」を提案している。「『嫌なことノート』は、あなたが遭遇したり、感じたりした『嫌なこと』を毎日書き続けていくだけのノートです」。その効能が4つ挙げられている。①感情のコントロールができ、ストレスがなくなる、②コミュニケーション力が上がる、③顧客心理が分かり、ビジネスのアイディアがどんどん生まれてくる、④時間の使い方がうまくなる。

ノートの実際

「自分が『嫌だ』と思うことをちゃんと知る。それが、『嫌なことノート』の第一歩です。ずっと心にひっかかっている『嫌なこと』もあれば、すぐに忘れてしまう『嫌なこと』もあります。でも、どちらの『嫌なこと』も、ちゃんと認識することで、自分の不満のベースを知ることができ、あなた自身の心の整理整頓ができるのです」。

「ノートに書き出すという行為は、『いったん自分からその事柄を離す効果』があります。ノートに書き出すことで、自分の頭の中の負の感情を整理できるのです。整理するときに大切なこと。それは、『嫌なこと』をノートに書く際には、絶対に感情を書きこまないで、事実のみを書くということです」。嫌なことはノートに受け止めてもらおうということだ。

「メモに記録するのは、『時間』『場所』『嫌なこと』の3つのキーワードです。たとえば、こんな感じで書き留めます。『午前11時、会社の電話、横柄な取引先』、『午後4時、会議室、理不尽に上司に叱られる』、『午後6時、社内、部下、残業しないで帰った』、『午後8時、居酒屋、同僚、すごい自慢話』」。

「書き出すことによって、客観的視点をもつことができるのです。冷静に眺めてみると、実は落ち込むほど嫌なことではないこともたくさんあります」。

「『嫌なこと』に過剰に反応するのは、肉体的にも、精神的にもよくないということです。『嫌なことノート』を書くようになると、それだけで無駄なエネルギーの消費を抑えることができるようになります」。この件(くだり)を読んで、大谷翔平が「イライラしたら自分の負け」と自分を律していることが想起された。

成功のヒント

本書は、ストレス解消というレヴェルより上のレヴェルにも言及している。「嫌なことには、成功のヒントがたくさん隠されている」。このため、ノートは「嫌なこと」スペースと「対策」スペースに分割することを勧めている。さらに、「嫌なことノート」を振り返れば、自分の成長が分かるというのである。

榎戸の場合

現役時代の私は、常時携帯していたシステム手帳「ファイロファックス」に「嬉しいこと」と、「嫌なこと」というページを作り、適宜、書き込むことにしていた。「嫌なこと」を書き込むことで、その嫌なことを頭から消すことができ、やるべき仕事に集中できたからである。半年ほど経って、その「嫌なこと」を見ると、その悩みは既に解決済みということもしばしばだった。また、落ち込んだときは、「嬉しいこと」を読み返して励まされることが多かった。この作業を数十年続けたことが、私のストレス解消に大きく役立ってくれたことは間違いない。