榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

推敲とは削除と加筆だ。一行の名文に固執し、しがみついても意味ない・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3202)】

【読書クラブ 本好きですか? 2024年1月22日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3202)

ジョウビタキの雌(写真1~3)、モズの雌(写真4)、ツグミ(写真5、6)、コガモの雌(写真7)、ダイサギ(写真8)をカメラに収めました。

閑話休題、『名文を書かない文章講座』(村田喜代子著、朝日文庫)は、ユニークな文章指南書です。本音で語られる内容が実践的なので、学び甲斐があります。

●「起承転結」よりも簡潔な構成の「序破急」を選択する。「私はこの『序破急』の形のほうが言い得ている気がする」。

●書き上げてから、最後にタイトルを考える。「タイトルとはラストの文章がもう一段深まったものと理解すればよいのである」。

●描写は対象に忠実であってはならない。「対象の中から自分の都合の良い材料だけを抜き取るのだ。考えようによっては、勝手で都合の良い視線なのである」。

●エッセイにも嘘がいる。「嘘は文章を育てていくのである」。上手に嘘をつくことを勧めているのです。

●文章は推敲しだいだ。「書いている間は暗闇を手探りで歩いているようなもので、その足跡を昼間の日光の下で検証してみる。冷静な目で読み直す。この推敲で助からないような作品でも立ち直る。文章の上手下手は、推敲の技術を持っているか否かにかかっているといってもよい」。

●推敲は何といっても削除と加筆の作業である。「どの部分を削除し、どの部分を充実させて書き足すか。仕上げの最後の関門は、この2点で極まる。文章の多少のぎこちなさやテニヲハの修正は、いい加減のところで見切りをつけよう。・・・あえて言えば、文章なんてどうでもいい。どこかでキッパリと見切りをつけて、あとは書かれている内容を充実させる。削除は植木の剪定と似ている。余分の枝葉を落とせば、本来の姿が見えてくる。興に乗って横道へそれたり、枝葉のところで行数を使っている箇所はないか。・・・削除には多大な勇気がいる。名文なんか惜しみなく捨ててしまおう」。著者は、「真の名文とは、用途に合った表現の文章をさすのである。テーマに沿って効果的な働きをしている文章のみが、名文というに値する。たった一行のいかにも気の利いた文章や、格好の良い表現を名文と思い込んで、愛惜のあまり削ることができず、苦しんでいる人がいる。一行や一句の名文なんてあるはずがない。文章は前後と連結してこそ機能を果たすもので、そこだけ独立しているのではない」と定義しています。この件(くだり)は、著者の真骨頂と言えるでしょう。

●文章を読む目を養う。良いものを良いと理解する思考と感受性を磨こう。そのための参考書として、著者は『高校生のための文章読本』(筑摩書房)と『高校生のための小説案内』(筑摩書房)を強く推薦しています。この2冊は、早速、読まねば!

●優れた文章を書き写す。「プロの優れた文章を原稿用紙に一字一字書き写してみよう。これは、昔から多くの人々がやってきた練習法だけにあなどれないものがある」。