榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

有吉佐和子と岡本かの子の肉声が響いてくる一冊・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3817)】

【読書の森 2025年9月4日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3817)

ツクツクボウシの抜け殻(写真1)を見つけました。テイカカズラ(写真2)が芳香を漂わせています。テキサス・セージ(学名:レウコフィルム・フルテスケンス。写真3)が咲いています。

閑話休題、随筆を読む愉しみは、小説では聞くことのできない、その作家の肉声に接することにあります。

有吉佐和子 岡本かの子』(有吉佐和子・岡本かの子著、川上弘美編、文春文庫・精選女性随筆集)の編者・川上弘美は、有吉佐和子にはエッセイ作品が思いがけないぐらい少ないと言っています。

そこで、有吉のルポルタージュ『女二人のニューギニア』の一節。
●東京で見る畑中(幸子)さんは、色白で、小柄で、黙っていて、廿日鼠が近眼鏡をかけて薄らぼんやりしているのに似た風情のある人だった。・・・礼儀正しくて、義理に厚く、気の毒になるほど四方八方に気を使って、その結果くたびれて、ものを言うのも嫌だという具合になっているような人だったのである。それがまあ、ニューギニアでは、なんという変りようだろう。

岡本かの子が一人息子の岡本太郎に、こんなにメロメロだったとは!
●わたしは今、お化粧をせっせとして居ます。きょうは恋人のためにではありません。あたしの息子太郎のためにです。わたしの太郎は十四になりました。・・・太郎の為にも、わたしはお化粧をしなくてはなりません。太郎が、いまにいくら美しい恋人を持つとしても、ママが汚なくては悲観するでしょう。そういう日の来ない先から、わたしはせっせとお化粧します。