三島由紀夫、辻邦生、吉村昭、有吉佐和子、村上春樹に対する小谷野敦の評価が興味深い・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2884)】
ヒヨドリ(写真1)、ツグミ(写真2、3)をカメラに収めました。ハクモクレン(写真4~6)、セイヨウアブラナ(ナノハナ。写真7、8)、ウケザキクンシラン(写真9)、ヒヤシンス(写真10)、リヴィングストン・デイジー(写真11)が咲いています。バナナ(写真12)が実を付けています。
閑話休題、『直木賞をとれなかった名作たち』(小谷野敦著、筑摩書房)は、著者・小谷野敦特有の独断と表現で構成されています。
個人的に興味深いのは、三島由紀夫、辻邦生、吉村昭、有吉佐和子、村上春樹に対する評価です。
●三島由紀夫
「私は三島由紀夫が嫌いである。・・・もっとも、三島に才能があるのは認めざるを得ない。特に戯曲、通俗小説がうまい。『潮騒』なんか、実際は大した小説ではないのだが、ベストセラーになって映画化されるところまで見込んで書いているのがニクイ。・・・許せないのは『金閣寺』とか『仮面の告白』とか『豊饒の海』とかの擬似純文学で、ひたすら観念でこしらえあげられた生硬な言葉の世界で、うっとうしいことこの上ない」。
●辻邦生
「私が『背教者ユリアヌス』を読んだのは20代後半で、ローマ皇帝の称号がアウグストゥスで、副皇帝(次期皇帝)がカエサルだということをこれで知ったが、小説としては『純文学か?』という疑念は残った。しかしここは直木賞なんだから堂々直木賞でいいんじゃないだろうか」。
●吉村昭
「吉村昭は、芥川賞候補に4回なって落とされた。・・・吉村が、なぜ直木賞にならなかったか、考えてみると、『戦艦武蔵』から5年ほどで『関東大震災』を書いて菊池寛賞をとっており、菊池賞は直木賞より格上の文藝春秋の賞だから、ではないかと思う。・・・直木賞を受賞すれば売れる作家になるはずだが、もはやこの時、吉村は、直木賞などという他からの箔付けが必要ない人気と実力を兼ね備えた作家になっていたのである」。
●有吉佐和子
「有吉は、『華岡青洲の妻』などはさすがにいいのだが、『恍惚の人』などは、老人痴呆問題を扱ったものとしてベストセラーにはなったが、その文章の通俗味には辟易した。・・・有吉には、黒人差別を扱った『非色』もあるが、これも文章は良くない」。
●村上春樹
「私はかつて村上春樹に批判的だった。いや、今だって基本的には変わってはいない。恥ずかしくない酒の頼み方、なんてことを考えることは恥ずかしいことだと思っているし、『騎士団長殺し』なんてあまりにフォン=フランツのアプレイウス『黄金のろば』の解釈そのものだし、あまり文学に詳しくない読者が村上春樹にのめり込むのは良くないことだと思っている。・・・『ノルウェイの森』の、精神を病んだ女への執着は私には受け入れられない。・・・女が精神を病んでいるところにつけ込んでいるような、男に都合のいい話だと考えるのである」。
小谷野の判断や物言いには違和感を覚えることがあるが、この5人に対する小谷野の判定には賛成です。