夫婦というのは、気質や性格が正反対のほうがうまくいくという私の確信が強まりました・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3819)】
シオカラトンボの雄(写真1)、ハクセキレイ(写真2、3)をカメラに収めました。
閑話休題、『武田百合子』(武田百合子著、川上弘美編、文春文庫・精選女性随筆集)に収められている、夫・武田泰淳に勧められて武田百合子が付け出したという『富士日記』を読んで、夫婦というのは、気質や性格が正反対のほうがうまくいくという私の確信が強まりました。
12歳年上の泰淳がニヒリスト的だったのに対し、百合子は天真爛漫で何事にも肯定的だったのです。
●「うんこビリビリよ」と言うと「俺は病気の女は大キライ」と言う。憎たらし。
●門に佇っていると、小さい小さい灯りと人影のように動くもの、こちらに向って近づいてくる。懐中電灯で照らしたら、いつのまにか散歩に出ていた主人だった。何故だろう。しばらく会わなかった人のように、なつかしかった。
●(娘の)花子の学校の宿題写真のモデルとなって、いろいろと変装したり、駈けずりまわったりして私は燥(はしゃ)いだ。「黒い雨」を読む。
●私は気がヘンになりそうなくらい、むらむらとして、それからベソをかきそうになった(糖尿病と脳血栓ゆえ食事のカロリー制限を医師から指示されている泰淳が煎餅を欲しがったため)。
●腰かけて海を見ていた主人はふらりと私の首に手をまきつけて寄りかかった。「・・・うふふ。死ぬ練習。すぐなおる」と、ふざけたように呟いた。めまいはすぐなおった。
●言いつのって、武田を震え上るほど怒らせたり、暗い気分にさせたことがある。いいようのない眼付きに、私がおし黙ってしまったことがある。年々体のよわってゆく人のそばで、沢山食べ、沢山しゃべり、大きな声で笑い、庭を駈け上り駈け下り、気分の照り降りをそのままに暮していた丈夫な私は、何て粗野で鈍感な女だったろう。
●毎朝、起きて顔をみると、少しずつ小さくなるみたい。ことに耳がほんの少しずつ薄く小さくなってゆくみたい。ひる頃病院より電話、明朝九時半に入院できるという。うれしい。
●(かんビールをねだる泰淳に)私が「ダメ」と言うと、「いつのまにか権力者のような顔しやがって」とにらみつけ、(見舞いにきている)埴谷(雄高)さんたちに向って「この女は危険ということを知らないんだから・・・」などと言う(この14日後に、泰淳死去)。
私事に亘るが、妻と私も気質・性格は正反対です。ただし、価値観は一致しています。