榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

哀しみのアンダークラス・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3839)】

【読書の森 2025年9月26日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3839)

不鮮明だが、エナガ(写真1)、抱卵しているハラビロカマキリの雌(写真2)、ハラビロカマキリの卵鞘(写真3)、チョウセンカマキリの卵鞘(写真4)、エンマコオロギの雌(写真5)をカメラに収めました。ヘチマ(写真6~8)が咲いています。

閑話休題、『新しい階級社会――最新データが明かす<格差拡大の果て>』(橋本健二著、講談社現代新書)の警告は、最新データに基づいているだけに説得力があります。

●新しい階級社会――上から、資本家階級、新中間階級(管理職など)、正規労働者階級、アンダークラスと、別建ての、新中間階級と正規労働者階級にまたがる旧中間階級(自営業者など)。

●労働者階級はいまや、雇用の安定した正規労働者階級と、非正規労働者からなる最下層階級へと分裂している。また格差拡大は男性と女性で異なる意味をもち、結果的に多くの女性が、最下層階級への転落を余儀なくされるようになった。

●本書では現代の最下層階級を「アンダークラス」と呼ぶ。それはパート主婦以外の非正規雇用の労働者階級を指し、その数は890万人で就業人口の13.9%を占めるが、平均年収はわずか216万円で、貧困率は37.2%にも達する。

●格差拡大によって悪影響を被るのは、貧困層や相対的に貧しい人々だけではない。格差が拡大すると、社会から連帯感が失われ、人々は互いを信頼することができなくなり、ストレスを感じるようになる。こうして人々の社会活動への参加が減少し、社会全体の健康水準が低下し、子どものいじめが増え、また犯罪が増加する。

●階級構造という舞台装置の上で展開される人生は、多くの人にとってより厳しいものとなった。この新しい舞台装置は、協調より対立、平和より争い、幸せより不幸をもたらしやすく、したがって喜劇より悲劇にふさわしい。

●階級格差を拡大させた新型コロナ。

●格差に対する態度は、所属階級によって異なり、政党支持と強く結びついている。また格差に対する態度は、憲法問題や沖縄問題という、「保守ー革新」の対立の伝統的な争点ともある程度まで結びついている。そして憲法問題と沖縄問題に対する認識は、最近になって「保守」の構成要素のひとつとみなされるようになった外国人嫌悪や嫌中・嫌韓の意識、つまり排外主義と密接な関係にある。

●新自由主義右翼の正体――伝統的な保守の政治的立場に加えて、新自由主義的な自己責任論を振りかざし、格差解消の必要性を否定し、原子力発電を擁護し、戦争を人間の本性による必然と考え、性的マイノリティの承認を拒むという、「新自由主義右翼」のユニークさはきわだっている。つまり「新自由主義右翼」は、高学歴かつ高収入で、多くの資産を所有する、主に男性たちである。自分たちの経済的利害に忠実に、自己責任論を支持して所得再分配に反対する人々である。そして日本が憲法改正によって軍隊をもつことを強く支持し、沖縄への米軍基地の集中を容認し、そして外国人に対しては排外主義的な態度を示す人々である。原子力発電所の廃炉に反対し、戦争を人間の本能によるものだとして容認し、同性愛などの性的多様性を否定する傾向も強い。また自民党支持率が高く、その支持基盤の中核に位置している。

●2024年の衆議院議員選挙では、「岩盤保守」が自民党から離れ、新興の右派政党――日本保守党と参政党――に投票した。【本書の発行は2025年6月15日、参議院議員選挙は2025年7月20日】