国の一般歳出の50%を占める社会保障給付費、あなたならどうする・・・【山椒読書論(140)】
『社会保障改革への処方箋』(喜多村悦史著、医薬経済社)は、100兆円を超え、国の一般歳出の50%超を占める社会保障給付費をどうにかしなければと、私のように危機感を持っている者にとって、救いの書と言える。
著者の考え方は説得力がある。先ず、「世界に先立って少子高齢化が加速しているわが国では、膨張し続ける社会保障給付費を捻出するため、各社会保険が綱渡りの運営を余議なくされている。保険料引き上げへの加入者の我慢も限界に近づいている。つまり給付の見直し・重点化を断行しなければ、制度を持続できない」と、現状を端的に述べている。
「保険給付のあり方は国会で議論すべきだが、専門技術的なことが多いので有識者の意見を聴こう」という風潮に、著者は「No!」を突きつけている。「保険給付のあり方は、保険制度加入者の合意、多数決によって決められるべきだ」というのだ。「社会保険は、保険料収入によって財源の外枠が決まるのだから、どこかで給付を増やそうとすれば他で削らなければならない。加入者に隠さず情報を公開すれば、唯我独尊的な主張は出にくいし、常識ある多数派によって抑圧される。自主財源によって自主的に運営される組織では理不尽な要求は通らない」からである。著者は国民目線に立っているのだ。
「どの給付をどのように見直すかという各論を選挙の争点にしたらとんでもないことになる」。これを避け、「社会保障制度改革を進めるには、社会保障を政争の具にしないで済むシステム(=保険制度加入者による自己決定)を構築するほかない」と論を進めている。
「ここで重要になるのが、社会保険の財政自立」であるとして、その具体的な処方箋が「所得保障」「医療・介護給付」「財源」「制度運営」と展開されている。
著者の、「社会保障制度は難しいというのが定評だが、本来それではまずい。義務教育を受けた者であれば誰でも理解でき、『なるほど公正になっている』と頷けるものでなければならない」という意見に賛成である。
「保険料納付者が制度運営の主人公になりうる」制度設計が実現することを願うや切である。