万葉集の素朴な愛の歌は、心に響くなあ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(4011)】
ハクモクレン(写真1~4)が咲き始めました。ギンヨウアカシア(別名:ミモザ。写真5~7。写真6は撮影助手<女房>撮影)、サクラソウ(写真8)が咲いています。









閑話休題、『万葉集 愛の100首』(中西進著、宝島社)で、とりわけ私の心に響いたのは、下記の9首です。
●紫草(むらさき)のにほへる妹(いも)を憎くあらば 人妻ゆゑにわれ恋ひめやも(紫草の粧<よそおい>が美しいあなたが憎かったら、あなたは人妻だのに、どうして恋に苦しむことがあろう)――天武天皇【私を含め、男は匂いに弱いのです】
●暁と夜烏鳴けどこの山上(みね)の 木末(こぬれ)の上はいまだ静けし(暁だといって夜明けの烏は鳴くけれど、この峰の木末の上で、まだ小鳥たちは囀りませんよ)――作者不詳【やって来た男を少しでも引き止めたい女の思い】
●神(かむ)さぶと不許(いな)ぶにはあらね秋草の 結びし紐を解くは悲しも(神々しく年を取ってしまったからとて嫌だというのではありませんけど、秋草のこの身、結んだ紐を解くのは悲しいことです)――石川賀係女郎【身を男に委ねようとするいま、恋をするには少し年を取り過ぎた秋草のような我が身の裸形を恥ずかしく思う女】
●わが背子(せこ)と二人見ませば幾許(いくばく)か この降る雪の嬉しからまし(慕わしいお方と二人で見ましたら、どれほどか、この降る雪も嬉しいことでしょう)――光明皇后【この気持ち、分かるなあ】
●君なくはなぞ身装餝(よそ)はむ匣(くしげ)なる 黄楊(つげ)の小櫛(をくし)も取らむとも思はず(あなたがいらっしゃらないのに、どうして我が身を装いましょう。匣にしまったままの黄楊の小櫛も、手に取ろうとは思いません)――播磨娘子【まさに、『史記』の「女は己を説(よろこ)ぶ者の為に容(かたち)づくる」ですね】
●真袖(まそで)もち床(とこ)うち払ひ君待つと 居りし間に月かたぶきぬ(両袖で床を清めて、あなたを待っていた間に、月も西に傾いてしまいました)――作者不詳【男を待ち続ける女】
●夕凝(ゆふこ)りの霜置きにけり朝戸出(とで)に いたくし践(ふ)みて人に知らゆな(夜のうちに霜が凍ってしまった。朝、戸を開けての帰りに強く踏んで音を立てて、人に知られないでね)――作者不詳【恋する女は気苦労が絶えませんね】
●緑児(みどりご)の為こそ乳母(おも)は求むと言へ 乳(ち)飲めや君が乳母求むらむ(赤子のためにこそ乳母を求めるというのに、あなたが乳を飲むため乳母を求めていらっしゃるのでしょうか)――作者不詳【若い男の求愛に対する熟女の答えが秀逸】
●筑波嶺(ね)の嶺(ね)ろに霞居(ゐ)過ぎかてに 息づく君を率寝(ゐね)てやらさね(筑波山の頂に霞がかかって動かないように、通り過ぎかねて息遣いも荒いあの男を連れてきて、誰か寝ておやり)――東歌【集団で働いている村の女たちの労働歌】
