かわいらしくノコノコと歩くクマムシは本当に不死身なのか・・・【山椒読書論(178)】
【amazon 『クマムシ?!』 カスタマーレビュー 2013年4月24日】
山椒読書論(178)
乾燥すると樽型に変身。真空、高温、高圧、放射能にも耐え、レンジでチンしても平気。120年間、水なしでも生き続ける生物。体長1mm以下の微小な、4対の足でノコノコと歩くクマムシには、このような不死身伝説がまとわり付いている。
『クマムシ?!――小さな怪物』(鈴木忠著、岩波科学ライブラリー)は、これらの伝説が真実かどうかに迫っている。
ムシといっても、クマムシは昆虫ではない。節足動物でもない。緩歩(かんぽ)動物門に分類されるが、この門はクマムシ類だけで構成されている。
クマムシを飼いたい、突然そう思い立った著者の奮闘が始まる。肉食動物オニクマムシの餌をどう確保するか。脱皮、産卵する彼女たち(オスのオニクマムシは滅多にいない)の世話に明け暮れる日々。
「わたし自身のオニクマムシ樽の経験に関していえば、室温で1週間はOK、なんとか1ヵ月ぐらいまでは大丈夫だろう。冷蔵庫(4度)に入れても3ヵ月を超えると危うい。しかし冷凍すればかなり長持ち(=長生き)する。研究室の古ぼけた家庭用の冷凍庫(約マイナス15度)で3年2ヵ月保存したオニクマムシ樽が蘇生してくれた。今のところ、これが自分で確認した最長記録である」。
自分の目でクマムシがノコノコと歩く姿を見てみたいという熱心な人のために、巻末に「観察の手順」が写真付きで示されている。①道端などでコケを採取する→②コケを水に浸し、30分以上(あるいは1晩)置いておく→③コケをバラバラにすると、多くの生物が振り落とされる。観察の邪魔になるので、コケの塊は取り除く→④20~40倍程度の実体顕微鏡でクマムシを丹念に探す。
幸い、我が家の庭にはあちこちから採取してきたコケが生育しているので、今度の週末には実体顕微鏡を買ってこようと思っている。