榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

日本の医療の輸出産業化を阻んでいるのは誰だ・・・【続・リーダーのための読書論(1)】

【ほぼ日刊メディカルビジネス情報源 2011年4月4日号】 続・リーダーのための読書論(1)

第一線の医師の大胆な提言

「病院」がトヨタを超える日――医療は日本を救う輸出産業になる!北原茂実著、講談社+α新書)は、たった200ページなのに、驚くほど大胆な提言がぎゅっと詰まっているので、圧倒されてしまう。著者の主張に賛成するにしろ、反対するにしろ、これはドクター必読の書である。そして、ドクターに日々接しているMRにとっても見逃せない一冊だ。

日本の医療を輸出産業に

著者は、「いまやるべきことはただひとつ、長らく国のお荷物のように扱われていた日本の医療を、国の基幹産業、輸出産業、戦略産業として位置づけることです。病院経営者を『理事長』から『CEO』に変えることです」と主張している。

その具体的な方策は、「国民皆保険を全廃しろ、医療を産業化しろ、総医療費を増やせ、医療産業を輸出して外貨を稼げ」と、明快かつ過激である。著者は、このような大胆な主張が誤解と反発を招くことは重々承知で、想定されるそれぞれの反論への回答を述べているが、なかなか説得力がある。

著者自身が実施していること

理事長を務める東京・八王子の北原国際病院で、入院患者家族の院内業務への参加、ヴォランティアに病院内で使用できる地域通貨「はびるす」発行、駅ビル内の総合クリニックで「ワンコインドック」を実施するなど、斬新な取り組みに挑戦している。

同時に、「カンボジア医療立国プロジェクト」――内戦で荒廃したカンボジアの医療を立て直すべく、当地に総合医科大学と付属病院の建設を目指す――に奔走している。著者の考える医療の輸出産業化は、医療を単体で輸出するのではなく、医薬品や医療機器産業、教育関連産業、建設産業、IT産業、サーヴィス産業、流通産業、医療の廃棄物処理産業、環境関連産業まで視野に入れている。