学習する組織が、組織だけでなく個人も成長させる・・・【続・リーダーのための読書論(47)】
個人と組織
ずば抜けた個人がいるが、まとまりのない組織と、飛び抜けた者はいないが、まとまりのある組織では、どちらが最終的に勝ちを収めるか。この問題に直面したとき、『学習する組織――システム思考で未来を創造する』(ピーター・M・センゲ著、枝廣淳子・小田理一郎・中小路佳代子訳、英治出版)は、心強いメンターとなってくれる。本書は、「システム思考」「ファシリテーター(促進役、進行役)」といった概念を世に広めた経営書として知られている。
学習する組織
「学習する組織」とは、目的を達成する能力を効果的に伸ばし続ける組織を意味している。変化の激しい環境にあっても、さまざまな衝撃に耐え、復元するしなやかさを持ち、環境変化から学びながら、適応すべく進化し続ける組織である。
「複雑で変化の激しい時代には、多様な関係者が真の対話(ダイアログ)を重ね、複雑な現実を見つめ未来のビジョンを共有することで、自ら創造し、再生し続ける組織が必要だ。・・・本書は、理想とする組織像を理念として掲げるのみに終わるのではなく、実践に必要な理論、具体的なツールと手法、そして実践を支えるための組織インフラの改革について提示している」と、訳者が述べている。
「学習する組織と、従来の権威主義的な『コントロールを基盤とする組織』との根本的な違いは、ある基本ディシプリン(実践するために勉強し、習得しなければならない理論と手法の体系)を身につけているかどうかだろう」として、5つのディシプリン――システム思考(パターンの全体を明らかにし、それを効果的に変える方法を見つけるための概念的枠組み)、自己マスタリー(継続的に私たち個人のビジョンを明確にし、それを深め、エネルギーを集中させること、忍耐力を身につけること、そして、現実を客観的に見ること)、メンタル・モデル(私たちがどのように世界を理解し、どのように行動するかに影響を及ぼす、深く染み込んだ前提、一般概念、想像、イメージ)、共有ビジョン(組織全体で深く共有されるようになる目標、価値観、使命)、チーム学習――を挙げている。
チーム学習
チーム学習に焦点を絞ろう。「チームが学習できることを私たちは知っている。スポーツや芸術、科学、ときにはビジネスにも、チームの英知がチーム内の個人の英知に勝ることや、チームによって協調的行動の驚くべき能力が生み出されることを示すめざましい例が存在する。チームが真に学習するとき、チームとして驚くべき結果を生み出すだけでなく、個々のメンバーも、チーム学習がなかったら起こり得ないような急激な成長を見せる」。
具体的には、「チーム学習というディシプリンは『ダイアログ』で始まる。それは、チームのメンバーが、前提を保留して本当の意味で『共に考える』能力である」。著者は、ダイアログ(対話、意見交換)とディスカッション(討論)とは異なると強調している。
ダイアログに必要な基本条件は、この3つだ。「①全参加者が自分の前提を『保留し(吊り下げ)』なければならない。つまり自分の前提を文字どおり『みんなの前に吊り下げるように』しておくのだ。②全参加者が互いを仲間と考えなければならない。③ダイアログの『文脈を保持』する『ファシリテーター』(進行役)がいなければならない」。
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