榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

悪い習慣を断ち切り、良い新習慣を身に付ける科学的アプローチ・・・【MRのための読書論(113)】

【Monthlyミクス 2015年5月号】 MRのための読書論(113)

悪い習慣を断ち切ろう

現在の好ましくない習慣を断ち切りたい、そして、こうありたいと思い描く新しい習慣を身に付けようと決心しても、途中で挫折してしまった経験は、誰にもあることだろう。『スマート・チェンジ――悪い習慣を良い習慣に作り変える5つの戦略』(アート・マークマン著、CCCメディアハウス)は、このようなケースに強力な効果を発揮する。悪い習慣を止めよう止めようと思いながらずるずると過ごしている人と、えいやっと悪習を断ち切った人とでは、その後の人生に大きな差がついてしまう。

良い習慣を身に付ける

どうすれば、習慣を変えることができるのか。本書では、そのポイントが脳の仕組みに基づき科学的に解説されている。

先ず、行動を変えることがなぜ難しいのかが明らかにされる。「脳は考える時間を最小限に抑えて、考えることに必要以上のエネルギーを使わないようにしたがる」。脳は現在身に付いている習慣に従うよう促すからである。また、長い目で見れば最善のことよりも、目先の快楽を優先したくなるのが人間の性(さが)だというのだ。 

5つのツール

脳の「ゴーシステムは、いったん習慣を生み出したら、環境が適していれば常にその習慣を実行したがる。習慣になっている行動がいいものではなくなれば、中止すべきだ。しかしあいにく、ストップシステムを作動させるだけでは長期的に行動を変えるのに有効とはいえない。ストップシステムは努力を必要とし、一方のゴーシステムはしぶといからだ」。

この現実を踏まえ、行動を変えるには有効なツールを使いこなす必要がある。行動を変え、その良い状態を維持する鍵となるツールは、①目標を最適化する、②ゴーシステムを飼い馴らす、③ストップシステムを活用する、④環境を管理する、⑤他人と関わる――の5つである。

「目標を最適化する」には、●漠然とした目標ではなく、具体的な目標とする、●結果ではなく、プロセスを重視する、●前向きな目標を設定する――ことが重要だ。そして、日々、進捗状況を確認するためのスマート・チェンジ日誌を付けることが推奨されている。日誌には、自分が成し遂げたい大目標を明記する。次に、ページを3分割した「行動」「障害」「サイン」の欄に、大目標を細分化した目標に近づくために取るべき行動、それらの行動を取る場合にぶつかるであろう障害、それらの行動が成功したと判断するためのサイン(目印)のリストを記入する。

「ゴーシステムを飼い馴らす」には、●いい計画を立てる、●成功を阻む障害への対処法を前もって考えておく、●新しい行動が習慣になるまでは、その目標達成にエネルギーを注ぐ――ことが必要である。

「ストップシステムを活用する」には、●自分の限界を知る、●誘惑から距離を置いて、誘惑を最小限にする、●意志の力を過大評価しないようにする。

「環境を管理する」には、●新しい行動を支援する環境に変える、●環境を変えて新しい習慣を作り出す、●環境の助けを借りて誘惑を撥ねつける。

「他人と関わる」には、●行動を変えるのに家族、他人、隣人との人間関係を活用する、●良きパートナー、助言者の協力を仰ぐ、●自分が達成したい目標と同じ目標を持つ人たちとのコミュニケーションを強化する。スマート・チェンジ日誌を付けていれば、誰がパートナー、助言者としてふさわしいかも分かるというのだ。

「変化を起こす」には、5つのツールを活用して、●先延ばしせずに行動を変える計画に取りかかる、●スマート・チェンジ日誌によって自分の進捗状況をチェックする、●行動改善が期待どおりに進まない場合も、失敗と捉えず成長の糧とする。「昔から言うように、変化とは二歩前進して一歩後退することだ。一歩後退した気分になったら、小さな失敗は変わるのは不可能だという証拠ではないことを思いだそう。むしろ、計画を手直しする必要があるという合図かもしれない。スマート・チェンジ日誌にうまくいったことと失敗したことを記録し、障害に出くわしたら、その情報を使って変わるためのツールを活用して、新たな打開策を見つけよう」。