「カッときたら幽体離脱」が、あなたの最高の武器になる・・・【MRのための読書論(146)】
すぐ頭に来る私
これこそ、すぐ頭に来る直情径行型の私のために書かれた本だと、『頭に来てもアホとは戦うな!――人間関係を思い通りにし、最高のパフォーマンスを実現する方法』(田村耕太郎著、朝日新聞出版)を手にした。
一喜一憂するな
「つまらない戦いで貴重な人生を無駄使いしないでほしい。・・・(『倍返し』とか『リヴェンジ』といった)些細なことに一喜一憂していたらストレスで病気になるだろう。また、一喜一憂するような人にはスタミナがないと思う。一喜一憂はくたびれるのだ。そして、こういう人は安定感がないので相手から信用されにくい。損なことばかりだ。長い人生をじっくり謳歌するためには淡々と生きることだ。淡々と、しかし世の中を斜めに見て、シニカルな発想で、戦略的に生きて行くのだ。・・・やられたら、やった人を気持ちよくさせて自分のために使い倒すのだ。それが本当の倍返しだと思う」。
「小さな戦闘で一喜一憂するのではなく、大きな戦いに勝つべく、淡々と戦略的に生きてほしい。自分の人生を謳歌すること、つまり人生最後の瞬間を考えれば、今あるいいことも悪いことも途中経過にすぎない。まさに『得意淡然、失意泰然』でいいのである」。
他人の評価を気にするな
「人生を謳歌して使い切るという視点に立てば、つまらないプライドなど捨てられるはずだ。考えるべきは、自分の人生をいかに主体的に生き抜くかということだ。他人の評価も、そのために活かすなら意味はある。しかし、そうした評価や自分のプライドに振り回されては本末転倒だ」。他人の視線を気にして、それに振り回されていては、徒に時間が過ぎ去り、あっという間に人生の終わりを迎えることになる。
自分を見失うな
私の長い企業人生活を振り返ってみても、成功する人に共通しているのは、どんな状況下でも自分を見失わない冷静さを具えていることだ。一方、失敗を繰り返す人は、すぐに自分を見失う傾向がある。
人生は不条理だと知れ
「そして何より、人生は不条理なものだと認識すること。不条理というより、あなたの都合のいいようにはできていないということだ。これからは未曾有の変化が加速し、ますます不条理になっていくかもしれない。ただし、最初から不条理だと思っていれば腹も立たない。その中で結果を出している人は、私たちには見えないところでコツコツと淡々と努力を積み重ねて実績を築いている可能性が高い。他人を見て一喜一憂するのは本当に無駄だ。それより、自分の人生を、この貴重な宝物のような人生を、大事に、一喜一憂することなく淡々と、カッとしてアホと戦ったりしないようにして、使い切っていこうではないか!」。人生なんてそもそも不条理なものだという現実感覚を持っていれば、いかなる職場であろうとストレスを大きく減らすことができるだろう。
最高の武器を身に付けよ
本書は、アホと戦わないためのアドヴァイスが満載であるが、一番役に立つのは、「カッときたら幽体離脱」である。「カッとしたときほど、自分の肉体を離れて自分を上から見る自分を強く意識するように」するのだ。「相手がいて、自分がいて、衝突しようとしている構図を、すっと霊魂のように自分から抜け出して、それこそ3Dで上から時間を止めてみるのだという。そこで初めて『我に返れるのだ』という。『こりゃまずい。相手に嫌われる』『もう戦いは始まりそう』ということを瞬時に理解して、その姿を上から見て冷静になれるのだ。怒りが込みあげてきたときに、自分を上から3D映像で客観的に観察するという手法は、自分のものにするのに時間はかかるが、できるようになったら非常に有効だ。常に練習していると自然とできるようになっていく」。
白状すると、以前から私はこの幽体離脱を実行している。幽体離脱を身に付けてからは、カッとなるケースが激減している。ぜひ、お試しあれ。
無駄な戦いはするな
「成功者は無駄に戦わない。戦うべき時と相手を選ぶ。アホと戦う無駄を知り尽くしているから成功するのだともいえる」。戦っても何も得るものがない、損をするばかりだという相手と戦ってはいけない。そういう相手から何を仕掛けられても、相手にしてはいけない。しつこく絡まれたら、逃げるが勝ちだ。
「戦うべき相手は人間関係で『くよくよ悩む自分』『腹を立てる自分』だと思ってほしい。・・・これからは、自分が本当に何がしたいのか? そのために何が必要なのか? そっちに専念したほうがいい。それがわかれば、他者のことを気にする暇なんてないことがわかる」という著者の言葉が、心に沁みる一冊である。
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