生きることへの絶望なしに、生きることへの愛はない。・・・【ことばのオアシス(119)】
【薬事日報 2013年7月10日号】
ことばのオアシス(119)
生きることへの絶望なしに、生きることへの愛はない。
――アルベール・カミュ
難解なことで知られるアルベール・カミュの処女作『裏と表』の一節。
この言葉は、彼の『シーシュポスの神話』(清水 徹訳、新潮文庫)を読むと、よく理解できる。「神々がシーシュポスに課した刑罰は、休みなく岩をころがして、ある山の頂まで運び上げるというものであったが、ひとたび山頂にまで達すると、岩はそれ自体の重さでいつもころがり落ちてしまうのであった。無益で希望のない労働ほど怖ろしい懲罰はないと神々が考えた・・・。ホメーロスの伝えるところを信じれば、シーシュポスは人間たちのうちでもっとも聡明で、もっとも慎重な人間であった」。誰も死を免れないという人間の生存の不条理を受け容れたところから、希望が生まれてくるというのだ。
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