榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

古典都々逸から現代都々逸まで、都々逸の全体像を知るのに最適な一冊・・・【山椒読書論(113)】

【amazon 『二十六字詩 どどいつ入門』 カスタマーレビュー 2012年3月24日】 山椒読書論(113)

都々逸というのは、男女間の情などを7・7・7・5調にまとめ、三味線の伴奏でうたわれる俗曲である。

二十六字詩 どどいつ入門――古典都々逸から現代どどいつまで』(中道風邪迅洞著、徳間書店。出版元品切れだが、amazonなどで入手可能)は、都々逸の全体像を知るのに最適な一冊である。

私が好きな古典都々逸を挙げてみる。
●恋にこがれて なく蝉よりも なかぬ蛍が 身をこがす
●惚れたしよ(ょ)うこにや(ゃ) お前のくせが みんなわたしが くせとなる
●逢うて間もなく はや東雲(しののめ)の 憎やからすが 告げわたる
●あきらめましたよ どう諦めた あきらめきれぬと あきらめた
●枕出せとは つれない言葉 そばにある膝 しりながら
●信州信濃の 新蕎麦よりも わたしや(ゃ)お前の そばがよい
●いやなお客の 親切よりも 好いたお方の 無理がよい
●顔見りや(ゃ)苦労を 忘れるような 人がありや(ゃ)こそ 苦労する
●惚れさせ上手な あなたのくせに 諦めさせるの 下手な方
●思い切られぬ 心が不思議 これだけ不実を されながら
●君と寝ようか 五千石とろか ままよ五千石 君と寝よ

私好みの現代都々逸も挙げておこう。
●けつ(っ)きよ(ょ)く最後は 瞼を閉じる 女のしあわせ ふしあわせ(尾藤三柳)
●言えばよかった ただ好きですと 飲んでくやしさ ますの酒(山口まどか)
●とれば小さく わたしと言つ(っ)て 黙る電話の 凍る夜(西月日出子)
●妻と書かれて ゆらいだ心 遊びでなくなる 今朝の宿(島田紗堂)
●やっと眠って 吾が子がはなす はずむ乳房を ダーリンへ(小川丙午老)

 
この本には収録されていないが、
●さびしがりやが 一升さげて さびしがりやに 逢いにくる
●酒の相手に 話の相手 苦労しとげて 茶の相手
も、好きな都々逸だ。